「愛犬のしつけで悩んでいることは何ですか?」
といった飼い主への質問や調査で必ず上位に入るのが「トイレがうまくいかない」という回答。
実際、私が行ってきたしつけ方教室でも多い相談事の一つでした。
ですから、まずは「困っているのはうちの子だけかしら」と気落ちしないことが重要です。
犬はトイレを自動的に覚えてくれるわけでもありません。
大切なことは神経質にはならず、正しい方法で根気よく行うことです。
今からそのやり方をできる限り簡単に解説します。
ぜひ、今日から実践してみてください。
なお、現在子犬を迎え入れることを検討している方向けに「トイレを楽に覚えさせるための子犬選び」も合わせてご紹介します。
参考にしてみてください。
トイレトレーニングの成功は環境づくりから
「トイレトレーニングがうまくいかない」理由に多いのが「成功するための環境が整っていない」ことが挙げられます。
大切なことは「できる限り失敗をさせない」ための条件を整えてあげることです。
- サークル(ケージ)のなかに居住スペースを設置する
- トイレゾーンはできる限り広いスペースを確保する
- 複数箇所に置く
- 粗相をされたら嫌なものを地面に置かない
などです。
詳しく説明していきます。
サークル(ケージ)のなかに居住スペースを用意する
サークルを用意して、そのなかで過ごさせたり、お留守番をさせる場合にはクレートなどのハウスを別途用意してください。
基本、犬は排泄する場所と寝床を分けて生活する動物です。
その境が曖昧であればあるほどサークル全体がトイレだと認識する可能性もありますし、何より本人が嫌なはずです。
また、将来のことを考えると「クレートトレーニング」を行うことは極めて重要となります。
ぜひご用意してください。
トイレゾーンはできる限り広いスペースを設置する
当然ですが、小さすぎると排泄物を外す確率が高くなります。
大きめのトイレトレーを用意してください。(対象よりワンランク大きいサイズをお選びください。)
サークル内に設置する際も同様です。
部屋のスペースが許す限りサークル自体も大きめのものをご用意ください。
複数箇所に置く
「トイレは一箇所まで」というルールはありませんし、ワンコも一つしか覚えられない訳でもありません。
また、子犬は遠くにトイレがあった場合間に合わないこともあります。
オシッコをしたいと思ったタイミングで近くにあればそれだけ成功確率が高まります。
愛犬が移動できる部屋が複数あるのでしたら、例えばサークル内に一つ、廊下に一つなどご用意されることをおすすめします。
サークル内に一つだけだと、中にいるときはバッチリだけど、外に出ると粗相をしまくるといったケースが多くみられます。
どちらでもできるようあらかじめ用意しておくほうが良いでしょう。
ちなみに、我が家は2階のリビングルーム、1階の階段下にトイレトレーを置いてます。
粗相をされたら嫌なものを地面に置かない
将来に渡り完璧にトイレで排泄を行うということはあり得ません。
子犬は言うに及ばず、基本覚えている成犬で習慣化されていたとしても、その日の体調や精神面でうまくできない日もあります。
高級なカーペットやソファを汚されるのを嫌って、サークルから一切出さないなど厳しい行動制約を課すのであれば「何のために犬を飼うのか」と私は考えてしまいます。
うちの子も完璧ではありません。
子供が脱ぎ捨てた洋服の上や、ベランダから室内に取り込んだ洗濯物の上にすることもあります。
一つ一つ高級なものだからと神経を尖らせていたら体は持ちませんし、何より一緒に暮らしていて楽しくありません。
愛犬の行動範囲の地面に置かれているものや敷かれているものはオシッコやウンチをされても仕方がないと思えるものにしてください。
いつからトレーニングをする?
何ヶ月以降とかありません。
排泄は毎日するものなので我が家に迎えいれたときから始めてください。
トレーニングの方法
トイレトレーニングに裏技はありません。
ポイントは下記の通りです。
- まずは観察し、タイミングを理解する
- 速やかにトイレ場所に連れて行く
- 成功したら褒めてあげる
- 自ら行けるよう導いてあげる
- 根気よく一貫性を持って徹底し続ける
まずは観察しタイミングを理解する
基本、犬が排泄をするタイミングとして代表的なのが、「寝て起きたとき(クレートなどから出してあげたとき)」と「水を飲んだりご飯を食べたあと」です。
これは自分たち人間に置き換えてもなんとなくわかります。
あとは、その犬の性格によってどこで便意をもよおすかは微妙に異なったりします。
遊んだりテンションが上がったあとや、寝る前だったり・・・。
ぜひ、うちの子をしっかり観察してその傾向を掴んでください。
「そろそろしそうだな」と思ったタイミングで、床の匂いを嗅いだり、同じ場所を回り始めたり、全体的にソワソワし始めたら間違いありません。
トイレに連れて行く準備を急いで始めましょう。
速やかにトイレ場所に連れて行く
「オシッコやウンチをするぞ」と思ったら速やかにトイレの場所に連れていきましょう。
ミニチュアダックスやトイプードルなどの小型犬は抱っこをして連れていって大丈夫です。
柴犬などの中型犬、ゴールデンレトリバーなどの大型犬はカラー(首輪)を持つなどして誘導してあげてください。
なかなか排泄をせずにその場を立ち去ろうとするかもしれません。
その場合はすぐにトイレの上に愛犬を戻してください。
根気よく辛抱強くできるまで行ってください。
なお、最初のうちはタイミングが合わないこともあるかと思います。
その場合は、一旦解放し改めて観察、仕切り直しをしてください。
成功したら褒めてあげる
トイレシーツなどの上で無事に排泄を済ませたら思いっきり褒めてあげましょう。
スキンシップを図りながら普段より高めのトーンの声を出し褒めてあげると、犬もテンションが上がり喜びます。
大切なポイントとして、褒めるタイミングは、排泄をし終わった直後にしてください。
最中だと、テンションが上がり途中でやめてしまう可能性がありますし、排泄物やシーツの交換、ペットトレーの掃除をしたあとだと、なぜ褒められたのか理解できない可能性が高いです。
トイレトレーニングに限らず、褒めるときは褒めたい行動をしたとき素早く褒めてください。
排泄をしたあとにサークルやクレートに戻すのは控える
排泄をしたあとすぐにサークルやクレートに戻すのは控えてください。
戻されるのが嫌でするのを我慢する可能性があります。
理想は、排泄後は自由にさせたり、一緒に遊んで上げたりしてください。
「排泄をする=嫌なことがある」ではなく、「排泄をする=楽しいことがある」と言った条件付けをイメージしてください。
自ら行けるよう導いてあげる
飼い主が連れていきトイレの場所で排泄をすることを覚えてきたら、次は少し手前から誘導を止めて(抱っこしている場合は下ろす)自らいくよう促し様子を見ます。
愛犬自身でたどり着きオシッコなどをした場合はたっぷり褒めてあげましょう。
徐々に誘導を止める場所を早めていき、できたら褒めるを繰り返していきます。
最終的に、自らの意思で行けるようになればトイレを覚えたことになります。
なお、個体差があり「昨日までできていた距離が今日はうまくいかない」といった日もあるかと思います。
そのときは焦らず、愛犬が成功する箇所まで戻り導いて、できるようになればまたその距離を広げていってください。
根気よく一貫性を持って徹底し続ける
犬はとても利口です。
飼い主が中途半端だと見透かします。
逆に、根気よく一貫性を持って徹底し続ければワンコもそれに応えてくれます。
トイレトレーニングに限らずしつけ全般に言えることですが、うまくいかないほとんどの原因はこれだと思います。
成功率を高めたいのなら徹底的に。
妥協をしたのなら多少の失敗は許容範囲として受け入れてください。
粗相をしたときやってはいけないこと
- 失敗したら怒る
- 粗相を見て過剰に反応する
- 後から粗相の現場を見つけて怒る
- うれション・ビビりションは粗相として怒ってはいけない
失敗したら怒る
トイレ以外で排泄中に怒ればビックリして途中でやめてしまうこともあります。
それが何度か続けば「飼い主の前でトイレをしてはいけない」と覚えてしまい、隠れてしてしまう可能性もあります。
その状態から、改めてトイレの場所を覚えさせるのは非常に困難です。
始める前でしたら、急いでトイレに連れて行ってください。(抱き抱えてもOKです。)
排泄中でしたら終わるまで静かに待ちましょう。
見つめてきたら目を合わせないようにしてください。
目があっていると「ここでしてOKなんだね」という承認と勘違いしてしまう可能性があります。
排泄後は愛犬に構わず、声もかけず、黙々と処理をしましょう。
粗相を見て過剰に反応する
思わず、現行犯だと「あっ!」とか「やめて」とか叫んでしまうことがあります。
そのとき、声がうわずったりすれば愛犬がここですれば褒めてもらえると勘違いすることもあります。
犬は言葉の意味より、声のトーンで判断をしたりします。
その声色の高低に関わらず排泄中に何かを発するのは得策ではありません。
終えるまで、目を逸らしながら黙って待機し終了後粛々と掃除をしましょう。
後から粗相の現場を見つけて怒る
粗相をした現場に連れていき「ここでしてはダメでしょ」と鼻をこすりつけたりすることの効果は全くありません。
犬はトイレでしなかったことを怒られていると思わず、「そこに排泄物があるから怒られている」と考える可能性があります。
それが強化されていけば、隠れてしたり、食糞などして証拠隠滅を図る行動に出る場合もあります。
犬は過去にさかのぼって「あー、あのときのことね」と思い返すことはできません。
リアルタイムに対応できなかったときは黙々と処理を済ませましょう。
なお、それは褒めるときも同じです。
後からだと何に対して褒めたのか、褒められたのかの認識はズレている可能性が高いです。
どのような状況下であれ「怒る」ことに対し問題が悪化することはあれど、よくなることはありません。
冷静に対応するようにしてください。
うれション・ビビりションは粗相として怒ってはいけない
飼い主が帰ってきたり、遊んだりしてテンションが上がったときや教育上叱ったときなど本人の意思に関係なくオシッコが出てしまうことがあります。
特に子犬のうちはよくあります。
成犬になれば基本その回数は減ったり、なくなったりします。(減らない場合は病気の可能性もありますので獣医師に相談をしてください。)
それらは粗相とは別のカテゴリだと思ってください。
決して怒ったりはせずに排泄処理を済ませましょう。
成功に導くためのコツは?
- トイレシーツはこまめに変える
- 最初はさせたい場所ではなく、したがる場所にトイレを設置する
トイレシーツはこまめに変える
犬は元来清潔好きです。
トイレシーツが少しでも汚れているとそこではせずに、少し外したり、別の場所でするワンコもいます。
我が家の愛犬がそうです。
「自分の排泄物でしょ」と心のなかで思ったりもしますが「シーツを替えなかった自分の責任だ」と思い気持ちを切り替え処理をします。
トイレでするときとしないときがある場合の原因として考えられる一つです。
ぜひ、マメに交換してみてください。
トイレシーツ代も馬鹿にならないので、用意したトイレトレーと同じサイズのシーツではなく、2分割、4分割できるぐらい小さいものを購入するようにしてください。そうすれば、オシッコをした箇所のシーツだけを交換でき経済的です。我が家の愛犬は、たまに境界線でするときがあり「このヤロー」と思うことがありますが我慢です。(笑)
最初はさせたい場所ではなく、したがる場所にトイレを設置する
「トイレシーツの上ですることは覚えたんだけど、目を離したすきにいつも同じ場所で粗相をしてしまう」
といった経験をお持ちの方もいるかと思います。
それは、飼い主の希望する場所と、愛犬がしたい場所が異なっている可能性があります。
そのときは「愛犬がしたい場所」にトイレを設置してください。
複数あるのであればその全ての場所に置いてください。
トイレトレーを何個も購入する必要はありません。
シーツを敷き詰めるだけで大丈夫です。
どこであれ、うまくできたのならたっぷり褒めてあげましょう。
徐々に場所が絞られてきたら、それ以外のシーツはなくしていきます。
同じ場所のトイレで安定的に排泄をするようになったら、本来配置したかった所にちょっとずつシーツ(トイレトレー)をずらしていきましょう。
これらの工程が面倒であれば、飼い主のおきたい場所へのこだわりは捨てて、愛犬のしたい場所のままにしておくと良いでしょう。
愛犬の排泄をコントロールするには?
トイレトレーなどでオシッコやウンチをしている際に「ワンツー」など声をかけてみてください。(言葉はなんでも構いませんが、ご家族がいる場合は統一してください。)
その条件付けを根気よく行うことで「ワンツー」の言葉を発すれば、そのタイミングで排泄ができるようにすることも可能です。
ぜひ、合わせて行ってみてください。
飼い主が寝ているときや、お留守番のときは大目にみよう
トイレトレーニングの基本は飼い主がすぐにトイレの場所へ誘導することですが、寝ているときやお留守番のときはそれができません。
神経質になり何度も起きて対応すると体が持ちませんし、教育上もよくありません。
共働きや一人暮らしで家をあけるときは物理的に不可能です。
飼い主が起きるまで、帰宅するまで、トイレトレーとクレート(扉は開けた状態)を設置したサークルの中で過ごしてもらうのがベストです。
ですが、子犬のうちは回数的に1日、6回程度しますので、未処理の排泄物が溜まっていくことになります。
ずっとサークル内にあれば踏んだり、食糞をすることもあるかと思います。(フリーだとウンチまみれの状態で家中歩きまわられます。)
子犬の頃フリーでお留守番させ、ロボット掃除機も稼働させていたのですが犬と掃除機がウンチまみれで地獄絵図でした。今は良い思い出ですが・・・。
しばらくの辛抱と受け入れて朝起きたら、家に帰ったら、黙々と処理をしてください。
いつかは良い思い出になります。
なお、成犬になれば病気などなければ10時間前後我慢できると言われていますので、それ以内に対応できるのであればクレートの中に入れて扉を閉めて待たすこともできますし、仮にサークル内フリーでも回数が減っている分処理はしやすくなります。
いずれにせよ、大目にみる気持ちが肝要です。
まだまだ改善の余地はあるようですがウンチまみれになることは防ぐことができるかもですね。お高いですが・・・。
家でも外でもどちらでもできるようにしよう
「大型犬だから外でできれば十分」だと思われているのであれば考え直してください。
「大雨のとき」「飼い主が病気のとき」「愛犬が老犬になって足腰が不自由になったとき」などなど、どうしても外に連れ出すことができない場面は必ずやってきます。
老犬介護になったとき、大型犬を都度外に出すのは重労働です。
屋内外どちらでもできるようになって損はありません。
室内飼いをする以上はサイズに関係なく家でもトイレができるようにしてあげてください。
また、「うちの子、外でしか排泄をしない」と言ったワンコもいるかと思いますが、トイレをしてから散歩に連れて行くなど時間に余裕がある時に取り組んでみてください。
人工芝タイプのトイレトレー。ベランダなどに設置している方もいるようです。
Q&A
これから犬を迎える方へ
トイレトレーニングがある程度できている子犬をブリーダーから迎えよう
迎え入れる際に、使用していたシーツや同じトレーを用意するだけで特にトレーニングをしなくともできたりします。
ぜひ、ブリーダーにお問合せをする際に「トイレも教えてくれますか?」と尋ねてみてください。
迎え入れた段階ではまだ途上であったとしても、基礎はできていますので覚えるのも早いと思います。
さらに、共働きや一人暮らしで長時間留守番をさせる必要がある場合、生後6ヶ月目以降のワンコがおすすめです。
離乳食も終わっていますし、トイレもより我慢できるようになっています。
その他理由は下記記事を一読ください。
まとめ
極論で言えば、トイレトレーニングは「家の中どこでされても気にならない」のであればする必要はありませんし、犬的にも寝床以外のどこでも好きな場所でできる方が楽かもしれません。
トイレの場所を指定したいのは飼い主であって犬ではありません。
大切なことはその前提を忘れずに、できる限り成功率を高めるための環境整備をすることです。
そして、怒らず根気よく取り組むことです。
一方、決して完璧主義にはならず、多少の失敗は多めにみてあげてください。
犬はロボットではなく生きています。
ぜひ、寛容の精神でドッグライフを楽しくお過ごしください。