家族の一員として数十年を共に過ごすことになるパートナー選びは慎重に行う必要があり「衝動買い」は避けなければいけません。
特に、初めて犬を飼われる方こそブリーダーからがオススメです。(もちろん2頭目でも)
その理由を日本で最初にブリーダー紹介サイトを立ち上げ、全国数百の犬舎を訪問した経験をもとに解説します。
ブリーダーの定義について
メリットを解説する前に、これから出てくる「ブリーダー」の定義は12のポイントをクリアしていることが前提となります。
まずは、下記記事をご確認ください。
ブリーダーから入手するメリット
私が考える13のメリットは下記の通りです。
- 良質な子犬を手に入れやすい
- 繁殖環境が見られる
- 親・兄弟犬が見られる
- 販売直前まで親・兄弟といる
- こだわりを直接聞ける
- 質の高さと価格が一致している
- 購入時に適切なアドバイスを得ることができる
- 動物病院を紹介してもらえる(ご近所)
- 飼育相談ができる
- 親犬・兄弟犬と繋がることができる
- 預けることができる
- ドッグショーの勉強になる(出すことができる)
- 将来的にブリーダーを目指す上で勉強になる
1:良質な子犬を手に入れやすい
愛情をたっぷりかけて育てた子を直接販売したいと思うのは当然で、そもそもほとんどのブリーダーはペットショップやセリに出しません。
大きな理由は、どこの誰に子犬が渡るかを把握できないからです。
その飼い主が飼育放棄をして捨てたり、最悪殺処分されてしまう可能性があったとしてもペットショップに卸した時点でブリーダーは追跡できません。
なお、直接譲渡をしているブリーダーは「飼いきれなくなったら戻すように」といった書面を交わす人もいます。
また、以前お会いした繁殖業者が「質の高い犬は自分で売るからショップには出さない。自信がない子をペットショップに売る。」と言ってました。
同様の考えの人たちが一定数いるかと思われます。
最後に、当然ですが直接販売は利益率も高くなります。
これは重要で、良質な子犬を作出するには費用と手間がかかり、こだわればこだわるほど直接販売しないとかかった経費を回収できません。
もちろん、ペットショップにも良質な子犬はいます。
ただ、誰よりもその子犬のことを知っているブリーダーが、自分の子の行く末を見守り、何かあったらできるかぎりサポートしたいと思ってもらえる存在は飼い主にとっても大きいはずです。
2:繁殖環境が見られる
飼育、衛生環境などを見せてもらうことはとても重要であり、仕入れ専門のペットショップでは確認することはできません。(個人店などはブリーダー犬舎に連れて行ってくれる場合もありますが少数派です。)
天塩にかけて育てた子の貰い手を直接目で見て判断したいとブリーダーが考えるのと同じように、大切な家族の一員を探している人にとっても「どのような環境で生まれ育ったのか確認したい」と思うことでしょう。
ブリーダー自身もこだわりがあればあるほど「自慢の環境を見てほしい」と思っていて「見学大歓迎」だったりします。
実際、お邪魔すると清潔で臭いがなく、1頭、1頭大切に育てられていることが伝わってきます。
逆に、自信がないと何かと理由をつけて犬舎に近づけないようにします。
私も今まで何百もの犬舎を見学してきましたが拒否された方は何件かいます。
その理由として多いのが「母犬が今敏感だから・・・。」「子犬の感染症リスクがあるから・・・。」などです。
確かにそれは一理あって、見学希望者は「予約なしで突然訪れない」「見学当日は他の犬舎やペットショップに立ち寄らない」など最大限の配慮をしなければいけません。
ですが、いつ、どんな時でも犬舎見学不可というのは「見せられない理由がある」と考えた方が無難です。
自信のあるブリーダーほど包み隠さず見せてくれます。
「ブリーダーで子犬を買う=犬舎見学をする」が前提であり、大きなメリットの一つだと考えます。
3:親・兄弟犬が見られる
「繁殖環境が見られる」と同様重要です。
どれぐらいの大きさになるか、どのような性格になるかなどは親犬を見ることである程度想定できますし、兄弟犬を見比べることで性格の違いもわかり、自分達にあった子を探すこともできます。
ただ、父犬は別のブリーダー所有だったりしますので確認できないことが多いですし、兄弟犬は新しい飼い主が決まり残りの1頭だけかもしれません。
ですが、少なくとも母犬を見ることはできるはずです。
いずれにせよ、実物の親犬を確認できることは仕入れ専門のペットショップでは難しく、ブリーダーならではのメリットと言えます。
ぜひ、犬舎環境同様、訪問時に親犬(母犬)や、兄弟犬(残っている場合)も見させてもらってください。
4:販売直前まで親・兄弟といる
「子犬の社会化教育」を考えた場合、飼い主に引き渡されるまでの間の環境もすごく大事となります。
出生前期、新生子期、社会化期(生後8週齢ころまで)は、親兄弟(姉妹)と一緒に生活を行うことが、子犬の心身共に健全な成長の為にはどうしても必要なことです。
生後1ヶ月~生後1ヶ月半くらいで、親兄弟(姉妹)から引き離された子犬は、犬社会をほとんど学習していないため、犬のコミュニケーション法、他の犬との遊び方、咬みつき抑制を全く理解しておりません。
成熟後に、他の犬や人間に対して恐怖心を抱いたり、攻撃性が増したり、誤飲・誤食をする可能性が高くなることが分かっております。
※このことを「異嗜(いし)と言います」
「異嗜」のある子犬は、心の安定を促す神経伝達物質が少なくなっていることが分かっておりますので、親兄弟(姉妹)との係わりがとても重要なことが分かります。
「ペットショップさくら」
母犬から教育を受けている動画を掲載しています。
下記記事をご覧ください。
最近、良いことに複数頭の子犬を一緒にさせ展示しているペットショップも増えてきましたが、それでも母犬と交流させることはできません。
また、子犬直売を売りにしている繁殖業者で一見母犬と触れ合っているように思えますが、出産後は母犬とは別ケージに入れて会わせることはほとんどないといったケースもあります。
ブリーダーが投稿しているSNSや、犬舎見学の際に母犬や兄弟犬と触れ合っているかを確認することが重要です。
あるいは直接そのような時間を設けているか尋ねてみるのもいいでしょう。
なお、なかには育児放棄をする母犬もいます。
その場合は、代わりにブリーダーであったり、母犬代わりができる別の成犬と一緒にいる時間があるかなど確認してみてください。
56日以前の社会化教育は新しい飼い主が直接行うことができません。
親犬にしか教えられないことを十分に習えること。
ブリーダーから子犬を買う最大のメリットだと考えます。
5:こだわりを直接聞ける
こだわりのあるブリーダーは話好きな方が多いです。
それこそ、繁殖犬種に対する思いから、我が子(犬)自慢など次から次へと溢れ出てきます。
私も犬舎見学にいった際に何時間もお話を伺うことが何度もありました。
それらは勉強になる話ばかりで、私も相当学ばせていただきました。
ぜひ、犬舎見学に行った際はブリーダーの熱い思いを存分に聞いてみてください。
6:質の高さと価格が一致している
子犬たちには全く罪はありませんが、あるペットショップの店頭で「この子がこの値段?」と驚くことは往々にしてあります。
犬の販売価格はブームになれば高くなります。
今はトイプードル、その前はミニチュアダックスやチワワ、コーギーと言ったところでしょうか。
基本、ブリーダーはミスカラーやスタンダードから外れている場合は理由を説明して価格を抑えますが、一部のペットショップや繁殖業者のなかには「珍しい色・大きさ」だとか言って逆に値段を上げ販売していることもあります。
100歩譲って健康であれば、高額で買う購入者がいても商売上自由です。
問題なのは、劣性遺伝同士の掛け合わせなどによって病弱な体で生まれてきたり、親犬に疾患がありながらも交配を行い生まれた遺伝性疾患を抱える確率が高い子犬を高値で出している場合です。
それは悪質と言えます。
ブリーダーは生まれてきた子犬がどんな欠点を持っていても、やむなく疾患を抱えてしまっていても、病弱であっても、どの子も幸せになってほしいと願い、ご理解の上大切に飼っていただける方には無償で譲ることだってあれば、そのまま犬舎で飼うこともあります。
「犬舎で繁殖した子犬のことは、長所も短所もブリーダー自身が誰よりも知っている。」
だからこそ、質の高さと価格を一致させることができると考えます。
それは、こだわりや思いが強く、プライドを持っているブリーダーであればあるほどこの法則には忠実だと思います。
7:購入時に適切なアドバイスを得ることができる
「その子のことはブリーダーが一番よく知っている」
これは当たり前の話です。
同じ、犬種だとしても犬舎が異なれば見た目や性格が変わります。
私も何度も目の当たりにしてきました。
「犬種特性より、犬舎特性の方が大きい」とさえ思います。
ブリーダー紹介サイトの運営を始めた頃、掲載している子犬の画像を見ただけで「○○犬舎さん家の子犬でしょ」と普通に答えられる方が多いことに驚きました。
ブリーダーは生物学、遺伝学や行動学、交配や病気、衛生管理に関する知識などあらゆるノウハウを持ち得ていないと務まるものではありません。
そして、何十頭、何百頭もの子犬を育ててきたのですから、購入時のアドバイザーとして誰よりも適任なのは言うまでもありません。
特に、初めて犬を飼われる方は家族構成や性格、飼育環境などによりその犬種を飼うことに向いているか、兄弟がいる場合「どの性格の子が合っているか」など的確なアドバイスをもらえると思います。
8:動物病院を紹介してもらえる(ご近所)
初めて子犬を飼う場合の動物病院選びは大変です。
その点、ブリーダーのかかりつけ動物病院の場合、その繁殖犬種を代々診ている可能性が高いため、獣医師もその血統の特徴を踏まえ診察してもらえるかと思います。
ただ、ブリーダーとご近所だったり、通える範囲内の飼い主限定となりますが・・・。
9:飼育相談ができる
私も、しつけ相談を受ける際、その子の今の行動が先天的なものなのか、後天的なものなのかできる限り予測し飼い主さんにご指導していますが、ブリーダーならそれがわかります。
例えば、母犬がシャイな場合、子犬もシャイになりやすいし、吠える子なら吠えやすいなどある程度遺伝します。
それらを把握した上で的確にアドバイスができるのはブリーダーだからこそです。
「飼い主より愛犬のことを知っている」存在がいるというのは大きい心の支えになると思います。
10:親犬・兄弟犬と繋がることができる
これもブリーダーならではです。
積極的なブリーダーだと、年に数回家族、親戚犬を集めるイベントを行ったりしていますし、会えずともブログやSNSに投稿していると嬉しくなり見てしまいますよね。
「やっぱり似てるなー」「その行動がうちの子と一緒」とかを思えることも楽しみの一つです。
また、悩んでいることも同じだったりして「自分だけではないんだ」と気持ちが楽になれたりもします。
このご時世、なかなかみんなで集まってというのは難しいかも知れませんが、強く望まれる場合はぜひブリーダーに尋ねてみてください。
11:預けることができる
どのブリーダーも預かりをしているわけではありませんし、遠ければ物理的に難しいとは思いますが、生まれ故郷で見てもらえる安心感はとても大きいと思います。
定期的に家を不在にする可能性がある場合は、将来的な事情も踏まえたブリーダー探しを行うことをおすすめします。
12:ドッグショーの勉強になる(出すことができる)
将来的に愛犬をドッグショーに出陳しチャンピオンにしたいと考えているのであれば、ショードッグ専門のブリーダーなどから子犬を入手し多くのことを学ぶ必要があります。
なかには、ショーに出すことを条件に子犬を販売しているブリーダーもいます。
注意が必要なのは、ご自身がオーナーハンドラーとなって参加するだけならそれほど敷居は高くありませんが、チャンピオンとなると、そのための労力と時間と経済的負担は相当なものになります。
ぜひ、ドッグショーなど見学に行き、可能な会場であればブリーダーから話を伺うなど事前にできる限り調べられることをおすすめします。
13:将来的にブリーダーを目指す上で勉強になる
ブリーダーになりたいと考えているのならブリーダーから犬を飼うこと一択だと思います。
ドッグショー同様、将来的に子犬を産ませることを条件にメス犬を販売するブリーダーもいます。
「師匠と弟子」の関係が多く残る世界です。
何から何まで独学で学ぶことは難しく、心より尊敬できるブリーダーとの出会いが重要となります。
ただ、生き物を扱い以上決して生易しいものではありませんし、今は法律改正によりハードルはかなり上がっています。
相当な覚悟を持って臨める方のみ、繁殖したいという思いを伝えてみてください。
まとめ
良質なブリーダーほど、その子犬の行き先は生まれる前から決まっていたりします。
数年待つこともざらです。
ですが、それこそがブリーダーから子犬を購入するもう一つの最大のメリットだと私は思っています。
特に、初めて犬を飼う方はブリーダーのアドバイスを受けながら余裕を持って準備と知識を学び、万全の状態で子犬を迎えることができるのは大きいと思います。
一昔前は、ブリーダーと接点を持つためには専門の業界誌などを購入してアプローチする必要がありました。
ですが、今はブログやSNSで積極的に情報発信している方も増えてきました。
決して「衝動買い」はせずに、情報収集をしっかりと行い、「ここだ」と思うブリーダーには会いに行ってみてください。