飼い主に対し「噛む・唸る」は必ず止めさせたい行為です。
子犬の頃にそのような兆候はなかったとしても、日々甘やかし続けると成犬になって表面化することもあります。
それらは「所有欲」が起因となることが多く早めの予防が重要です。
今回は、食事中に行って欲しいトレーニング方法を解説します。
しつけは予防が大切
しつけ教室に問題が起きてから参加される飼い主が多いですが、一度その習慣のついた行動(飼い主がそう導いているケースが多いのですが・・・)を修正するのは大変です。
成犬になればなるほど自我が芽生え時間と根気が必要となります。
当然、愛犬自身もストレスを抱えることになります。
よく「子犬の頃は良い子だったんですが・・・」とおっしゃる飼い主がいます。
その場合、私は「子犬の頃良い子は当たり前。子犬の頃からワルは相当ワルです。」とお伝えしています。
また、「うちの子バカ犬なんです。」とおっしゃる方には、「バカなのは犬ではなく飼い主です。」とハッキリ言うこともあります。
「こんなはずでは・・・」となる前にしつけ(教育)をすることが重要です。
実際、私のしつけ方教室は飼い主のお勉強が中心でした。
ワンコは自宅にお留守番してもらい、飼い主だけの座学を行うこともあります。
愛犬を連れてきての教室でも7割以上が飼い主への知識教育です。
飼い主が良くなれば愛犬も良くなります。
もちろん、例外もあれば、先天的に難しい場合やトラウマを抱えている保護犬など、専門家の力を借りなければいけないケースもあります。
ですが、飼い主が正しい知識とトレーニングを行うこと自体は否定されるものではありませんし、何か悩ましいことが出てきた場合でも柔軟に対応できるスキルが身についていたりします。
問題行動が起きてから悩む前に、そもそも起きないように予防することが大事。
今回のテーマである「所有欲」をコントロールすることもその一つです。
所有欲をなくすことは重要
「愛犬が食事中近寄ると唸られた」
「好きなおもちゃを取ろうとしたら噛まれた」
「お気に入りの場所にいる愛犬に近づこうとすると威嚇された」
といった相談を持ちかけられることがよくあります。
ワンコだってある程度の所有欲は持って然るべきだと思いますが、飼い主が「愛犬が気に入らない、機嫌が悪いと触れない。」状態というのは行き過ぎです。
これらの欲は成犬になればなるほど強化されていく可能性があり、今まで唸っていただけが噛んできたり、所有欲の範囲が広がっていく恐れもあります。
腫れ物に触るよう愛犬と接することが健全な関係ではありませんし、愛犬の命を救うことはできません。
大袈裟だと思われるかもしれませんが、私はしつけの目的は「愛犬の命を守るため」だと考えています。
「散歩中、毒や針の入ったおやつやドッグフードを咥えたときに取り出すことはできますか?」
そんなことレアケースで滅多に起きないと考えるかもしれません。
ですが、しつけは極めて命の危険に関わる非常時に真価が問われます。
「唸られた」「噛まれそうになった」からと取り出すことを止めてしまい飲み込んでしまえばどうなるでしょう?
そんな悲劇はないに越したことはありません。
そこで、子犬のうちから所有欲をなくす(軽減させる)ための予防が重要となります。
次章でその方法をお教えします。
所有欲をなくす(軽減)ための方法
愛犬が食事やおやつを食べているときに行うトレーニングとなります。
食事を食べる前までのしつけについては下記記事をご参照ください。
食事中に行うトレーニング
- 言葉など特にかける必要はありません。
- 素早く取り上げてください。
- 少し唸ってきても無視してください。
- 落ち着くまで再開しないでください。
- 「私はあなたの食事をコントロールできる」という気持ちで与えてください。
- 1・2回繰り返してみてください。
- しつこくする必要はなく、背中を軽く撫でる程度でも大丈夫です。
定期的に取り上げることで、食事の所有権は飼い主にあり愛犬にはないということを理解させます。
また、食べている間触れることで常に飼い主の存在を意識させその状態をなれさせます。
おやつを食べているときに行うトレーニング
- 与えるときも「まて」をしっかりさせてください。
- おやつはすぐに飲み込めるものではなく、棒状ですぐにちぎれない素材のものを利用してください。
- 「放せ」と言って取り上げてください。
- 放さない場合は口を空けてみてください。(必ず愛犬の口の可動範囲で!)
- 難しい場合はリラックスポジョションから始めてください。
- 手で持つことが可能なら、その状態で食べさせることもありです。
「口を空けて取り出す」行為は一見虐待に移るかもしれません。
ですが、ダメなものを口に入れたときに飼い主は咄嗟にこの動作を行う必要があります。
私の愛犬は子犬期に徹底してこれらのトレーニングを行います。
ですから、成犬になって私が何をしようとなすがままです。
犬がこの行為を好きになることはありませんが諦めて受け入れてもらうしかありません。
何度も言います。
「愛犬の命に関わります。」
将来に想定される非常時に備え子犬のうちからしっかりと予防措置(トレーニング)を行うことが極めて重要です。
おすすめグッズ
飼い主に取られまいと早食いをしてしまう可能性もあります。
ゆっくり食べてもらうためにも下記のようなフードボウルを利用するのも良いかもしれません。
注意点
すでに本気噛みをする場合は危険ですのでやめてください。
その上で速やかに専門家にご相談してください。
成犬の場合、本気噛みをしなければ取り組むことは可能です。
ですが、それまで蓄積された習慣がありますので時間と根気が必要となります。
今までしなかったことをするのですから愛犬も抵抗を見せるかもしれません。
それに怯んで止めてしまうと、愛犬はより根性が身につき、主導権を握るきっかけを与えてしまう危険性もあります。
取り組む場合は中途半端にならないようお気をつけください。
成犬で保護犬の場合は、前の環境なども踏まえ慎重に判断する必要があります。
所有欲が強そうであれば保護犬スタッフなどに相談してみてください。
まとめ
私はしつけ方教室で「食欲はあった方が嬉しいですが、所有欲はなくしましょう。」と伝えています。
所有欲は独占欲、縄張り意識などとも密接に関係しそれらを放置し続けると、より強化されていく傾向があります。
挙句、手に負えず愛犬を手放すという最悪のケースになることもあります。
ペットであれば甘やかすだけで良いのかもしれませんが、家族の一員として迎え入れているのであれば考えられる最悪のケースも想定し早めに予防トレーニングを行うことを強くお勧めします。