私は、愛犬と暮らす上で最低限必要なしつけは「まて」と「呼び戻し」だと考えています。
それは、「愛犬の命を守る」上で重要だからです。
落ち着きがない子は特に「まて」を徹底して学ばせることが重要です。
今回は、その理由と、教え方、ドッグカフェや犬と入れるレストランなどでで生かせる応用方法などを解説します。
母犬は暴走する子犬を叱ります
まず、下記動画をご覧ください。
暴走する我が子に対し母犬が叱っています。
これは集団社会と送る上で極めて重要で、一頭が勝手な行動を取れば群れ全体に迷惑がかかることになります。
そのため、母犬は落ち着くようにと指導するのです。
テンションが高くなること自体は悪くないのですが、周りが見えなくなっては困ります。
例えば、散歩中リードをぐいぐい引っ張るときや、ドッグランで興奮して走り回っているときに、飼い主が「落ち着きなさい」と指示を出しても言うことを聞くでしょうか?
そもそも、その声が愛犬の耳に届いているでしょうか?
コントロールのきかない状態は危険で、飼い主が引きずられ転倒したり、曲がり角で犬が勢いよく飛び出し通行人が怪我をする恐れだってあります。
ドッグランにいたっては、ノーリードなのでケンカが始まるとリードを引っ張り犬同士を離すこともできませんし、扉が開いた隙や、脱走できそうな場所から飛び出すことだってあります。
最悪、命に関わる事態となります。
落ち着きなく、飼い主の声が届かない状態がどれだけ危険かおわかりいただけると思います。
愛犬のテンションは飼い主がコントロールすることが重要です。
落ち着かせる=まて
落ち着かせる上でまず行うトレーニングが「まて」です。
「おすわり=まて」だと勘違いされている方もいますが、正確には「まつ」ことができていれば立っていようが、フセをしていようが構いません。
また、ご飯の前などドッグフードをガン見して待っている子もいますが、凝視する先はフードではなく飼い主です。
重要なことは、飼い主に対し意識を集中させているかです。
愛犬は「まて」をすることで自制心を養い「落ち着いて飼い主の指示を待とう」と努めます。
一方、「まて」の指示を出さず、テンションが上がっている子を放置し、ひとりでに下がるのを待っている方がいます。
この場合、愛犬自らテンションコントロールを行なっている状態で、「興奮し続けるのも、冷静になるのも自分自身」となり、飼い主の指図に聞く耳を持たないようになります。
具体例で言えば、ご飯を食べたり散歩に行く時間を決めるのも自分、リードを引っ張って散歩コースを決めるのも自分、ドッグランでどれだけ遊ぶのかを決めるのも自分といった状態です。
その習慣化がついた愛犬は、飼い主が少しでも指示を出そうとしたり、自信が気に入らないときは唸ったり、威嚇をしたり、最悪噛むようになります。
実際、血だらけ、傷だらけで相談に来られる飼い主が一定数いました。
「こんなはずではなかった」と、最悪手放す事態だけは避けなければいけません。
そうならないための第一歩が「まて」となり、犬を飼う上で欠かすことのできないトレーニングとなります。
ノーリード&リード装着時の「まて」の教え方
ノーリード時のトレーニング方法は下記記事をご覧ください。
リード装着時のトレーニング方法は下記記事をご覧ください。
リードを踏んでの「まて」はドッグカフェでも応用できる
以前、「初めてのドッグカフェ講習会」というしつけ教室をよく実施していました。
そこに参加される飼い主の悩みとして多いのが「愛犬が落ち着かないので食事どころではない」といったものです。
小型犬の場合は、膝の上に乗せる方がほとんどですが、テーブルに前足をかけたり、店員や他の客が通ったときに、唸ったり、吠えたりする子もいて、それらを静止するのに忙しく、ゆっくりお茶や食事をとれないといった相談です。
一方、オーナーも衛生面や他のカフェ利用者、近隣住民に迷惑をかけることもあり、マナーが悪い飼い主には困っているのが現状です。
抱っこをして食事をすることに否定はしませんが、まずは落ち着いてしっかり足下で「まて」ができることが先決だと考えます。
なぜなら、抱っこ禁止のお店もあり(犬連れではない客を受け入れているお店など)、それを把握せず訪問し、床上でおとなしく「まて」ができないので引き返すと言った事態は避けたいはずです。
それに、抱っこをしていてテンションが上がり始めたら、足下で落ち着かせることができるという自信があれば、より安心して食事を楽しめると思います。
ぜひ、ドッグカフェに行かれた際は小型犬であったとしても「リードで足を踏む」機会を作ってみてください。
足を踏んだ状態で、リードは備え付けのフックなどに引っ掛ければ両手が空きます。
フランス料理などのコースも安心してナイフとフォークを握り食べることができます。
何度も行っていると踏まれる際、本人も自発的に「ふせ」をして落ち着いて待ってくれるようになります。
動画をご参照ください。
「落ち着かせる」ことは「諦めさせる」こと
落ち着かせるには「諦めなさい」という意味もあると私は考えています。
なんだか「諦めさせる」ことを教えるって抵抗ある方もいるかもしれません。
子供ならいずれ親元を旅立ち、自身の力で未来を切り拓けるのでチャレンジさせることは重要だと私も思います。
ですが、愛犬は旅立ちません。
「今まで育ててくれてありがとう。」
と言って、家を出て一人暮らしを始めることもありません。
生涯、飼い主の管理下で暮らしていくことになるのです。
飼い主が日中働いているのならお留守番をしますし、食事や散歩の時間も自分の好きな時間に行くこともできません。
犬からすれば思い通りにならないことだらけかもしれません。
そんな毎日を一生過ごすのに、諦めきれない子に育てるとどうでしょう?
要求や主張が強くなる一方、叶えられない現実にストレスが溜まり、それが原因で望まない行動をとるかもしれません。(要求を叶えることは望ましくもありません。)
「諦めさせる」ことは「現実を受け入れさせる」こと
「諦めさせる」とは「現実を受け入れさせる」ということです。
例えば、リードを踏む行為を地道に行えば、犬は自らフセをするようになると先ほど伝えましたが、さらに続けると寝るようになります。
犬は与えられた環境で、いかに前向きに快適に過ごすかを考えることができる動物です。
リードを踏まれたなかで考えた結果、その答えが「寝る」ことなのです。
「要求することを諦め、現実を受け入れ、与えられた環境のなかで快適に過ごす子」に育つことができれば、飼い主の生活環境が今後どのように変わるとも柔軟に対応できやすい子になるはずです。
ドッグカフェや、犬と入れるレストランで飼い主が食事をしている間、足下でスヤスヤと寝ていてくれれば嬉しいとは思いませんか?
ぜひ「まて」をしっかり覚えさせて、愛犬と一緒にとことんお出かけしてください。