「お散歩中、すれ違う人に吠えてしまう。」
通行人からすれば決して嬉しいことではありません。
ご近所に住んでいたり、通勤時同じ時間に出会う人からすればストレスにもなりますし迷惑だと思っているはずです。
また、吠えられたことに驚き転倒し骨折をするなどのトラブルも多発しています。
裁判となり損害賠償を支払う事例もあり、被害者(犬)とならないためにも対処が必要です。
今から「吠える行動を軽減する・なくす」ための簡単にできる方法を解説します。
首輪・リードを見直そう
愛犬が通行人に吠えることをやめさせたいと思っているのなら、まずは普段使用している首輪(カラー)やリードの見直しから入る必要があります。
使用方法については後述します。
- ハーフチョークカラーを用意する
- ショルダーリードを用意する
ハーフチョークカラーを用意する
ハーフチョークカラーという首輪は、愛犬が散歩中リードを引っ張ったり、威嚇したり、拾い食いなどすることを防止するために使用します。
通常の首輪はベルト式やワンタッチタイプとなりますが、このカラーは半分がチェーンでできているのが特徴です。
飼い主がリードを引くとほどよく首が締まり自制を促すことができます。
また、着脱もしやすく、なれると輪を広げると自ら入ってくれます。
さらに、ベルト式などの首輪に比べ脱走もしづらくなっています。
私もうちの子には代々ハーフチョークカラーを使用しています。
より愛犬の首への負担を減らしたい場合は「リミテッド・スリップ・カラー」がおすすめです。
どちらか一つご用意ください。
リミテッド・スリップ・カラー
ショルダーリードを用意する
肩掛けタイプのリードです。
両手が空くのが最大のメリットです。
排泄の処理や愛犬の写真を撮影するにもいいですし、できれば、お散歩バックも肩掛けタイプがいいですよね。
愛犬が突然興奮して走り出したときリードを放してしまう心配もありません。
ただ、大型犬など引っ張りの強い犬に対しては転倒する恐れもあるのでそこは要注意です。
空いた手でリードをコントロールします。
考えられる通行人に吠える原因
考えられる主な原因は下記の通りです。
- 「吠えたから逃げた」という成功体験
- リードを引っ張ったり抱っこをすると気が強くなる
- トラウマになっている
「吠えたら逃げた」という成功体験
最も多い理由が「吠えたら逃げた」という成功体験の積み重ねだと考えられます。
通行人からすればただ通り過ぎているだけですが、ワンコ本人からすれば「逃げていった」と勘違いしている可能性もあります。
さらに、その相手が少しでもびっくりしたり、怖がる反応を見せたりすればその思いは強化されていくはずです。
普段から「来客が来たら吠える」や「ご飯をくれと吠える」など、いわゆる「要求吠え」や「無駄吠え」をしているワンコは散歩中もそのような行動に出やすいと言えます。
日々の生活からそれらの「要求」を通さない関係づくりが重要です。
リードを引っ張ったり抱っこをすると気が強くなる
臆病(シャイ)な子に多いのですが、基本気が小さいのに、飼い主がリードを持ったときや抱っこしたときだけ強くなるワンコがいます。
これを私は「シャイだけど気が強い」と呼んでいます。
「吠えることを何とかしたい」と相談に来られるワンコの多くがこのタイプだったりします。
サイズとしては小型犬がほとんどです。
「飼い主」という虎の威を借りて強くなった気でいます。
しつけ方教室に来たとき威勢よく吠えているワンコたちも、飼い主に退出してもらい私と2人だけになると一気に元の弱い性格に戻ります。
気を強くしているのは、飼い主です。
吠えているときにやってはいけない対応を必ずやっています。
その代表的な行為が「リードを引っ張る」ことと「抱っこをする」ことです。
問題の根を深くしているのが、飼い主は「無意識」にこれらの動作をおこなっているということです。
子犬の頃からそのように育てられると、どれだけ気が小さいワンコでも一定条件のもと強くなった気になります。
従って、飼い主のその間違った対応を改める必要があります。
トラウマになっている
ワンコは「男性・子供・黒い服・走っている・自転車に乗っている・キャリーケースを引いている」などなど特定の人物や状態に苦手意識や警戒心を持つことが往々にしてあります。
例えば、私が飼っていた先住犬は子供が苦手でした。
高い声で突然近寄ってきたりするのが怖いのだと思われます。
「男性に蹴られた」とか明確にわかる酷いことをされた場合の原因は明らかですが、嫌なことがあったとき「黒い服を着た人が歩いていた」といったような偶然が重なるケースもあります。
いずれにせよ、それらの負の感情(トラウマ)を根気よく払拭してあげることが必要となります。
すぐに実践できる方法とは?
- リードを上に引っ張る
- リードを踏む
- 抱っこをしない
- 散歩時間・散歩コースを毎回変更する
- 苦手な人、物にちょっとずつ慣らす
リードを上に引っ張る
普段、上記図のように手に持ちながら引っ張られて散歩していませんか?
そして、斜めに引っ張る姿は「綱引き」に似てませんか?
綱引きは、仮に10の力で引かれたら、10以上の力で引き返そうとし、どちらの引く力が強いかを競い合うスポーツです。
そして、力が入れば入るほど興奮状態となり、一層パワーがみなぎってきます。
それと同じ原理が働いていると想像してください。
飛びつく勢いで通行人に吠えているうちの子に対し、斜めにリードを引くとますます犬のテンションが上がり勢いを増します。
そうして、オラオラモードのまま吠え続けていると、通行人が通り過ぎていく(犬からすると逃げたと思う)のですから気持ち良いはずです。
普段気の小さいワンコも強気になるのは頷けませんか?
ちなみに、「放してくれよ、俺はいつでも飛びつく勢いだぜ」と言っているかのように吠えているうちの子のリードを「あら、そうなの」と放したりすると、「何で放したの?やめてくれよぉ」と魔法が解けたように弱気になったりします。(これは、基本気の弱い子の場合です。真に攻撃的な子は放すと本当に飛びつきますのでやらないでください。)
大切なことは、「興奮させないようにする」「興奮したとしても速やかに」そのテンションを下げることです。
その方法として最適なのがリードを上に引っ張ることです。
やり方
リードを上に引っ張ると、ワンコは地面に向かって引っ張り返さなければなりません。
ですが、踏ん張る力は斜めに引く力より劣ります。
地面に向かって継続して引っ張り続けることは困難です。
その結果、力が入りきらず諦め、落ち着きマテの状態となり吠えやんだりします。
コツは、リードを短く持って何度か優しく少し上にあげてください。
首を痛めてしまいますので決して前足が浮くほど強く引き上げないでください。
できれば、吠える前(通行人が通る前)に行うのが理想です。
そのままの状態で通過してもらいましょう。
最初のうちは、それでも引っ張り吠え続けている可能性もありますが、根気よく上に引っ張り続けましょう。
慣れてくると「おすわり」をし始めます。
すわったタイミングでアイコンタクト(愛犬の目を見つめながら)をとり飼い主に注目させることで、より通行人が気にならなくなると思います。
ハーネス(胴輪)は不向き
首だけで引っ張り返すよりも、体全体の方が力が入ると言うのは想像に難くないと思います。
それだけ、飼い主も負けじと「綱引き」の状態が長く続くことになり興奮度は増していきます。
上に引っ張ったとしても、首より胴の方がより踏ん張れます。
もちろん、気管支炎など呼吸器系の疾患がある場合などはハーネスのままできる範囲で行ってみてください。
手で持つ長いリードや、フレキシブルリードは不向き
ショルダータイプのリードは手持ちより綱引きになりにくく、引っ張られても体全体で踏ん張れます。
また、どちらかの手で短めにリードを持って歩くことで吠える前に素早く上に引っ張ることもできます。
一方、長いリードやフレキシブルリード(伸縮自在リード)をある程度伸ばした状態で散歩をすると、いざというときリードを引き戻したり、縮めてから上に引く必要があるためタイミングを逃します。
角を曲がる際など犬から先に出てきたら、びっくりして転倒される方もいます。
また、車や自転車と愛犬がぶつかるのは避けたいですよね。
安全面でも、街中で散歩をするときはなるべく短めにするようにしてください。
リードを踏む
リードを上に何度か引っ張っても落ち着かず吠える場合は次のステップ「リードを踏む」に移行します。
吠えるのをやめさせるには、まずは興奮状態を鎮め落ち着かせる必要があります。
リードを踏む目的は綱引き状態を終わらせるためです。
犬は一方通行の力になれば落ち着く傾向があります。
踏んでいると足と引っ張りっこ(綱引き)はできません。
方法ですが、前から通行人が歩いてきて「吠えそうだな」と思ったらその場に立ち止まりゆっくりとリードを踏んでください。(首を痛める可能性がありますので、決して勢いよく踏まないでください。)
踏む場所はカラーとの接続部分から10センチほど離れた場所がベストですが、最初のうちはもっと遠くでも大丈夫です。
- 成犬や保護犬にいきなりこの行為を行うとパニックを起こす場合もあります。決して無理をせず上に引っ張る行為を地道に行ってみてください。
- ベルトタイプやバックルタイプの首輪、ハーネスの場合は踏むと脱走される可能性があります。
- このトレーニングを行う際はハーフチョークカラーやリミテッド・スリップ・カラーで必ず行ってください。
なれてくると踏めば自らフセをするようになります。
通行人が通り過ぎるまでその姿勢を維持してください。
通過中、踏まれている状態で吠えていても愛犬を無視して踏み続けてください。
吠えそうな場面では根気よく続けてみてください。
この踏む行為は様々なシーンで応用がききます。
また、随時ご紹介していきますね。
ハーフチョークカラーの使い方は間違えると愛犬を傷つけてしまうことがあります。決して無理をせず、不安な方はお近くのドッグトレーナーや訓練士などに教わってからトレーニングを行うようにしてください。
抱っこをしない
吠えたとき抱っこして「いけません」とか言ってマズルをおさえたりする方がいらっしゃいますが、これは無意味で逆効果です。
愛犬からすれば恐らく叱られているという認識ではなく、「加勢されてる」あるいは「吠えることを認めてもらっている」と思っている可能性が高いです。
さらには、抱っこされることで目線も上になってきますので、まさに「虎の威を借る犬」状態です。
それらの思いは抱っこされればされるほど強化されていきます。
望ましくない行動をやめさせるには、無視をするなど極力愛犬に触れないことが重要です。
抱っこをして何をしようがそれは「スキンシップ」となります。
愛犬の身に危険がない限りは抱っこをせずに、リードを上に引っ張るか、踏むなどの対応をしてください。
散歩時間・散歩コースを毎回変更する
ワンコは毎日決まった時間やコースの散歩を繰り返すと習慣化され、要求行動やナワバリ意識が強くなる場合があります。
できる限り、時間や場所を変えることがそれらの行動や意識を抑制することに繋がります。
愛犬が右に曲がりたそうであれば左に曲がるなど、散歩は飼い主主導で行うようにしてください。
特に、毎日同じ人物に対して吠えるといったケースは、時間や場所をずらすなどして物理的に会わないようにすることも一つの解決方法です。
苦手な人、物にちょっとずつ慣らす
黒い服を着た人が苦手なら、知人にその色の服を着ておやつを与えてもらうなどを繰り返せば克服できる可能性があります。
自転車に乗っている人に吠えるなら、そのシチュエーションを作りおやつを与えるなど・・・。
ただ、どうしても頼めない人もいるかと思いますので、そのような機会を作れる環境が整うようでしたらぜひ行ってみてください。
褒美におやつは使わなくていいの?
私は、与えなくて良いと考えています。
なぜなら、おやつを与えるタイミングは難しく、少しでも吠えた後にあげると「吠えたからもらえた」と間違った認識をする可能性もあります。
また、最終的にはおやつは抜かないといけないのですが、「おやつの切れ目は縁の切れ目」でご褒美を持っていない飼い主には興味がないと言ったワンコをドッグイベントの現場でよく見かけました。
先日も、愛犬と散歩をしている飼い主が数十メートル進むごとにおやつを与えながら散歩をしていたのですが、「なんだか大変だなぁ」と思ってしまいました。
子犬を育てるプロである母犬はおやつをあげません。
どっからともなく出てきません。
それでも子犬を教育しています。
その事実は重要だと私は考えています。
ですが、おやつを全否定するつもりもありません。
タイミングよく与えることができ、最後は抜くことができるのであれば有効だと思いますし、ドッグスポーツを教えたり、苦手な人からおやつをもらうことは効果的だと思っています。
ぜひ、おやつを与えない方法も一度試してみてください。
まとめ
通行人に吠えるワンコは、他のシチュエーションでも吠えていることが多いかと思われます。
対処的にできることを行うのはもちろんですが、根本的な関係性もしっかり構築する必要があります。
ペットではなく真の家族の一員になれるよう、愛犬が安心して過ごせるよう関連記事も一読の上ぜひ楽しく励んでみてください。