子犬を迎え入れ最初に行うしつけ(トレーニング)が「おすわり」と「まて」だという飼い主は多いのではないでしょうか?
実際、そのコマンドの出し方はネット上に溢れているかと思います。
そもそも、なぜ「おすわり」や「まて」の練習を行うのでしょうか?
私は「まて」ができればおすわりはできなくても良いと考えています。(もちろん両方できれば望ましいですけど。)
その理由を説明します。
「おすわり」は「まて」をさせることが目的
おすわりを教える目的は「まて」ができるようになって欲しいからです。
つまり、「まて」の中に「おすわり」が含有されているとお考えください。
先日、トイプードルや柴犬の飼い主より「綺麗なお座りができない」「姿勢が崩れていく」といった相談を受けましたが、「まて」ができているのであればそれらは重要ではありません。
「おすわり」以外の待ち方として、その場で立ったままやフセなどがあります。
どれも正解です。
どのタイプでも飼い主が出すコマンドに従い、解除されるまで集中しながら「まて」を続けていることが肝要です。
なぜ「まて」が重要なのか?
「まて」は愛犬の命を守るために重要であって「呼び戻し」とワンセットで必ず覚えさせてほしいコマンドです。
「まて」と「呼び戻し」は愛犬の命を守るために極めて重要
飼い主は、常に愛犬のテンションをコントロールする必要があります。
うちの子が自分の思うがままに要求や感情をむき出しにして、興奮を抑えられなかったらどうなるでしょう?
要求が通らなければ飼い主に対し、感情的に唸ったり、吠えたり、威嚇したり、最悪噛んでくることだってあります。
さらに、犬はその要求を拡大していく傾向がありますので、近所の人や犬、旅先などで出会ったご家族に対してもあたり構わずそのような行動を取られると非常に困ってしまいます。
また、興奮を抑えられないと道路を飛び出したり、ドッグランでも暴れ回ったりする可能性があります。無論、呼んでも帰ってきません。
その結末は、手がつけられず暴力的トレーニング(虐待)をしたり、飼育放棄をしたり、保健所送りになることだってあります。
事故にあったり、人や犬を傷つけてからでは遅いのです。
「まて」は自制心を育む
最初にマテを行う場面は食事の前だと思います。
食欲が強い子であればあるほど、感情が高ぶり興奮して「早く食べたい」とガッツきます。
その本能のまま食事をあげるとどうでしょう?
その行為が承認されたことになり、その子はますますそれらの行為が激しくなっていきます。
「まて」をさせることで興奮を抑え、冷静で落ち着いた状態にさせる必要があります。
そして、冷静になった時点でご飯をあげ、「落ち着いたらご飯がもらえる」と条件付けを行います。
自分の欲求を通したいときには、「まず落ち着く=自制心を持つ必要がある」と覚えさせる必要があります。
「まて」という言葉がそのスイッチになると思ってください。
愛犬を落ち着かせ自制心を失わないようにさせるために「まて」が必要
「まて」の教え方
それでは、具体的に「まて」のさせ方を解説します。
「うちの子、食に関心がない」といった相談もよく受けます。病気の疑いや、体調が悪いなども考えられますが、シンプルにその食事が好きではない(美味しくない)こともあります。その場合は、ドッグフードを変えてみたりしてください。
- 「マテ」はできる限り低く重量感のあるトーンで言ってください。(声が高いと愛犬のテンションが上がる可能性があります。発する言葉は「stop」や「Wait」でも何でも大丈夫です。)
- 同時に手のひらを愛犬の顔の前に広げてください。(視覚的に教えることも重要です。)
飛びつくこともあるかと思います。素早くあげてとられないようにしてください。
- 食べようとしたら、手のひらを愛犬の前に広げながら「マテ」と何度も言ってください。
- 食べにくるのをやめなければ、ステップ3に戻ってください。
重要なことは、「妥協しない」ということです。
- 何度やってもできない場合は、ステップを行ったり来たりしてできるまで必ずしてください。
- 「今日はこれぐらいでいいかな」はNGです。
- 会社行く時間が間に合わない場合は、余裕を持って早めに与えトレーニングをしてみてください。
最後までせず、中途半端な状態で与えた場合、犬の根気が勝ったことになり、次回からは「もっと粘ってやろう」と益々興奮を抑えられなくなる可能性だってあります。
「飼い主根性あるな」
と思わせるぐらい徹底的にしてください。そうすれば、愛犬が根負けをして自ら落ち着くようになっていきます。
早い子は1日で覚えていくはずです。
勝手に解除させない
犬のトレーニングは「タイミング」が重要です。
タイミングがずれると飼い主が考える条件付けと異なる受け取り方をしてしまいます。
今回の場合、食器を地面を置いて「よし」という前に食べに行こうとしたらどうでしょう?
8・9割は指示に従ってますが、最後の最後に自分(愛犬)の意思で解除をしていることになります。
それでは意味がありません。
「まて」と「よし」はセットです。
食器を床に置いても「まて」を維持させてください。
「よし」といってはじめて「待っている状態から動いて食べにきていいんだよ」と教えてください。
「まて」から始まる指示は「よし」で完結。愛犬に勝手に解除をさせてはいけません。
ジェスチャー(仕草)だけで待てるようにしよう!
言葉と同時に、愛犬の顔の前に手のひらを見せることも行ってください。
それを繰り返し行えば、ジェスチャーだけでも「まて」ができるようになっていきます。
あまり声を出せない環境や、少し遠くにいるうちの子に対して有効です。
「まて」の応用
食事の「まて」ができるようになると、様々なシーンに応用してみてください。
例えば、
- 散歩に行くときカラーやリードを装着するとき
- 家の外に出るとき
- 散歩中、リードを引っ張りすぎるとき
- ドッグランで遊ばせていてテンションが上がりすぎたと感じたとき
などなど。
いずれにせよ、興奮してきたり、落ち着きがなくなってきたと感じたら「まて」をさせてクールダウンさせましょう!
成犬になってからトレーニング、保護犬など大丈夫?
保護犬の里親で成犬を迎えいれることもあるかと思いますが何歳からでも間に合います。
ただ、基本子犬以上に根気は必要となります。
辛抱強く、焦らず、時間をかけて取り組んでみてください。
ダメなのは、根負けして諦めてしまうことです。
気を持ち直しトレーニングを再開したとしても、愛犬の根性もパワーアップしていますので、今まで以上に時間がかかってしまいます。
毎日、忙しく過ごしている飼い主であれば、多くのトレーニングをする時間的余裕がない場合もあるかと思います。
そのときは、いろいろなことを広く浅く行うのではなく、優先順位を設け、絞り、一つのことを徹底的に行ってください。
ぜひ、「まて」と「よし」から行ってみてください。
まとめ
ペットではなく、家族の一員(コンパニオンアニマル)として犬を迎え入れたのであれば、愛犬が将来に渡り人間社会のなかでうまく共生できるように育てるのは親である飼い主の努めです。
「厳しいことをしたら嫌われませんか?」
といった相談を受けることもありますがそれはありません。(虐待などしていれば別ですが。)
犬は群れで生きる動物です。
逆に言えば、1頭では生きていけない動物です。
DNAに集団社会で生きていくための機能が備わっています。
厳しくも優しいリーダーには信頼関係のもと付き従います。
実際、母犬も子犬に対し頻繁に教育的指導を行いますが、子犬は母犬のことを嫌いになりません。
「まて」は強いリーダーを示すための大事な一歩です。
ぜひ、うちの子との充実したドッグライフのためにも頑張ってみてください!!