「毎日散歩しているから、うちの犬は運動不足じゃないはず。」
そんなふうに思っていませんか?
実は、飼い主の歩行速度に合わせた散歩では、犬の必要な運動量を十分に満たせない可能性が高いのです。
特に、伸縮リードを使って長く伸ばしていても、「歩いているだけ」では犬にとって物足りないケースがほとんど。
この記事では、なぜそれだけでは不十分なのか、専門家が詳しく解説します。
人の歩く速度は犬にとって“ゆっくり過ぎる”

まず前提として、私たち人間の歩行速度はおおよそ時速4〜5kmです。
これに対し、犬は走るための体つきをしており、持久力も高く、8〜10km/hのトロット(速歩)を自然にこなせる動物だと言われています。
つまり、人のペースに合わせた「のんびり散歩」は、犬にとって低負荷の軽い運動に過ぎません。
たとえるなら、アスリートにウォーキングばかりさせて「鍛えられている」と思っているようなものです。
消費カロリーは「おやつ数個分」!?

犬のエネルギー消費量を調べた研究では、人と一緒にゆっくり歩く散歩での犬のカロリー消費は、体重1kgあたり0.8kcal/1.6kmほどとされています。
例えば、10kgの中型犬が1.6km(約30分)歩いたとしても、消費するカロリーはたった8kcal程度。
これは犬用おやつ数個にも満たない程度のエネルギー消費で、健康維持や体力発散には到底足りないのです。
「ただ歩くだけの散歩では足りない」

「散歩=運動ではない」と認識することが重要です。
- 「散歩から帰っても息ひとつ切らしていないなら、それは“運動”とは言えない」
- 「犬は飼い主の歩く速度に合わせることで、後ろ足の筋肉をほとんど使わない」
- 「問題行動や吠え癖の裏には、運動不足が潜んでいることが多い」
また、運動不足による行動面への悪影響も懸念されています。
どうすれば“本当に必要な運動”になる?

単純に散歩の時間や距離を増やすのではなく、高強度な運動を心がけることが大切。
実際に犬が心拍数を上げ、満足するまで体を動かしているかがポイントとなります。
以下のような工夫で、犬の運動の「質と量」を両方高めることができます。
・ドッグランや広場で思いきり走らせる
自由運動で犬本来の走る動きが引き出せます。
ただし、ドッグランデビューをするには呼び戻しができるようになることが必須です。


伸縮リード(ロングリード)などを活かしたボール遊び
リードの安全範囲内でも高強度の動きが可能です。

階段や坂道、凸凹のあるコースで散歩
毎日平坦で舗装された道ばかりを歩くのではなく、アップダウンのある方が、後ろ足の筋肉も使えるため、効率的な筋力維持が可能です。
それに、愛犬が四肢をどう使って凸凹道を歩くか考えることも脳の刺激になります。

引っ張りっこ・ドッグスポーツ・知育トイ(かくれんぼ)
身体と同時に脳の刺激にもつながり、ストレス発散にも効果的です。
散歩の時間を倍にするより、10分間でも全力で遊ばせる方が効果的な場合もあります。
引っ張りっこは『離せ』も同時に教えることが重要です。


まとめ|「歩く=運動」は、思い込みかも
人の歩く速度に合わせた散歩は、犬にとっては「運動」ではなく「気分転換」や「探索」の時間に過ぎないことが多いのです。
運動不足は、肥満や関節疾患、問題行動、ストレスの原因にもなります。
だからこそ、飼い主の歩行速度だけに頼らない運動習慣を考えることが大切です。
大切な愛犬が、心も体も健康でいるために――。
今日から少しだけ、運動の“質”を見直してみませんか?