「うちの子は臆病(シャイ)で他の犬が苦手なんですがどうすれば良いでしょうか?」と言った相談が多く寄せられます。
私は逆に「仲良くさせる必要がありますか?」とお答えしています。
必要ないものを望み愛犬を苦しめていませんか?
なぜ、私がそう思うのかをご説明します。
「臆病(シャイ)」それが普通です
人間に置き換えて考えてください。
その日初めてパーティーや会合で出会った人といきなり無防備でフレンドリーに話したり、スキンシップを図ったりできる方は少数じゃないでしょうか?
学校や職場でも、性格があまり合わない人とは程よい距離感を保ってはいませんか?
誰とでも全方位すぐに打ち解け、心を開いてコミュニケーションができる人の方が少数だと思います。
ワンコに置き換えてみてください。
そもそも、動物は警戒心が強い生き物です。
ドッグランや散歩で、初めて会う犬、1日数分しか接触しない犬といきなり仲良くできるでしょうか?
「おともだち〜」と言われても「友達じゃねぇよ」と思っているかもしれません。
そもそも犬に「友達」と言う概念があるのかすら定かではありません。
従って、他人の犬と遊ばないうちの子を異常と思わず、むしろ正常であり普通のことだと思うことが重要です。
隣の芝生は青い
臆病で「友達ができない」と困っている飼い主がいる一方、「ドッグランでは他のワンコと遊ぶのに夢中で私の言うことを聞いてくれません。ずっと側にいさせるにはどうすればいいですか?」といった相談もをよく受けます。
真逆の悩みです。
「動物は警戒心が強い」とお伝えしましたがフレンドリーな子がいるのも事実です。
その理由として、先天的なもの(親がフレンドリーだった)や、小さいうちから他の犬と頻繁に遊ばせていたなどが考えられます。
「他のワンコと遊ぶ」こと自体悪いことではありません。
問題なのは「言うことを聞かない」ということです。
実際、ドッグランでフレンドリーに遊んでいるワンコに対し、飼い主が呼び戻しを行ってもすぐに帰ってこない子が多いです。
全く戻ってこない子もいて、最後はおやつで釣ってようやく「捕まえる」と言った光景をよく目にします。
フレンドリーなうちはまだいいのですが、突然喧嘩モードになることだってあります。
その喧嘩がすぐに駆けつけ引き離すことができない距離で始まったとき、呼び戻しができていないと致命傷を負ったり負わせたりする可能性があります。
それって怖くないですか?
私は、飼い主の責任として最も重要なことは「愛犬の命を守る」ことだと考えています。
いくら他の犬と仲良くできたとしても愛犬の命を守れないリスク(コントロールできない状態)が自分にあると思えば回避します。
ちなみに、私は呼び戻しができないワンコがドッグランにいたらうちの子は入れません。
いつも嫌なことをするのは飼い主?
「ワンコとも仲良くし、かつ言うことはしっかり聞いてほしい」
これもある意味理想の姿かもしれませんがなかなかハードルが高い話です。
なぜなら、他の犬と夢中で遊んでいるときの愛犬の耳は「シャットアウト」されていることが多く、飼い主の声など全く入って来なかったりするからです。
それに戻ることを嫌がるワンコだっています。
例えば、仲良く他のワンコと遊んでいたとします。
愛犬からすれば「ずっと遊びたい」と思っているなか、無理やりリードを引っ張り離したり、カラー(首輪)をつけてドッグランを退出させるのは飼い主です。
ドッグランでリードや首輪を持つと逃げ回るワンコって見たことはありませんか?(散歩に行くときは喜んで近寄ってくると思いますが・・・。)
こうして、「飼い主=楽しいことをやめさせる嫌な人」と条件付けされ続けば言うことを聞かなくなって当然です。
「飼い主は嫌な人」を植え付けるために他のワンコと仲良くさせるってなんだか悲しいですよね。
もちろん、そうさせないためのトレーニング方法はあります。
「呼び戻しをして帰ってきたらカラーをつけてまた外して」とか「散歩中、仲の良いワンコと離したらまた近づけて」など・・・。
ただ根気がいります。
フレンドリー過ぎるワンコは、他の犬と遊ばせる前に「呼び戻し」を中心に飼い主自身がしっかりと向き合う時間が必要です。
飼い主と遊ぶことが一番楽しくて幸せ
私は両方は追わず、「臆病でいいから飼い主のそばを離れない」「離れたとしても、スイッチ(飼い主の声が耳に届かない)が入りそうなら指示を出し落ち着かせる」育て方をしています。
他の犬と仲良くさせ、かつ言うことも聞かせるために時間と労力を使うぐらいなら、「飼い主といることが一番楽しくて幸せ」と思ってもらえるために注力したいと考えています。
なぜなら、愛犬と一番長く一緒にいるのは飼い主だからです。
私は他人の犬との時間よりも、自分と愛犬が楽しく遊ぶ時間を大切にしたいと思っています。
臆病な子は飼い主に依存しやすいので「他のワンコとどう仲良くさせるのか」ではなく、「家族でどう楽しく遊ぼうか」と言う発想の転換をして実行してみてください。
臆病だけど気は強いはNG
フレンドリーなワンコは「呼び戻し」ができない子が多いとお伝えしていますが、臆病なワンコは「気が強い」子が多いです。
私はそれを「シャイだけど気が強い」と呼んでいます。
本来は臆病なくせに、飼い主が「お犬様」にしてしまうことで自分は強いと勘違いしてしまう子たちです。
気に入らないことがあると噛む子だっています。
震えているからといって「かわいそう」と構いすぎるのは良くありません。
臆病なワンコは家族の中でリーダーになっていることも多いです。
シャイな子であっても甘やかさずにしっかりと教育をすることが必要です。
(「シャイだけど気が強い」に関する対処方法などは改めて別の機会に書きますね。)
まとめ
臆病な子をフレンドリーにさせることも不可能ではありません。
ですが、これはこれで時間も労力もかかります。
大切なことは「同じ犬であれば、他の犬とも無条件に仲良くするわけではない。」と飼い主が認識することです。
そして、それは成犬になればなるほど強くなります。
「仲良くさせたい」と飼い主が勝手に思っているのであって、愛犬が「うまく遊べるようになりたいなぁ」と願っているわけではない。
その一方的な願望を押し付けることが愛犬にとって幸せなことでしょうか?
ぜひ、臆病なうちの子の性格を受け入れて、家族で一緒に遊ぶことを第一に考え、より絆が強い関係を築いてほしいと願っています。