子犬を新しく迎えられた皆さん、しつけは何のためにすると思いますか?
私は「愛犬の命を守る」ためにすると考えます。
大袈裟と思われるかもしれません。
ですが、実際愛犬をコントロールできないことが原因で大怪我を負ったり、亡くなるケースが後を絶ちません。
さらには、他のワンコや、人に危害を加えてしまうことだってあります。
うちの子が加害犬になることは耐えられないと思います。
愛犬をペットではなく「家族の一員」だと思うのなら、「うちの子の命を守る」ことが親である飼い主の義務だと考えます。
「命を守る」ためのトレーニングはいろいろありますが、今回はそのなかの一つをご紹介します。
私は、それを「リラックスポジション」と呼んでいます。(言い方は異なっていたりします。)
ぜひ、家族全員で今日にでもスタートしてみてください。
リラックスポジションとは?
「どこを触れても嫌がらない子にする」「飼い主がテンションをコントロールする」
ことを主な目的としたトレーニングとなります。
どこを触れても嫌がらない
「うちの子が噛んでくるので触れない、怖い」と言った相談をしつけ方教室で受けることがあります。
飼い主の手は傷だらけで、子供は怯え「凶暴な野生動物と暮らしているのでは?」と見紛ってしまいます。
そんなときに必ず話すことがあります。
「私が大の犬嫌いだったとします。犬たちに危害を加ようと思い道端に毒入りのおやつを置いておくかもしれません。散歩中、それを食べたうちの子の口から咄嗟に取り出すことはできますか?」
これは決してあり得ない話ではありません。
神奈川県内の各地で、路上にまち針が刺さったペットフードがまかれているのが先月下旬以降、相次いで見つかっています。
座間市では飲み込んだ犬が入院して手術を受ける事態になり、警察が動物愛護法違反の疑いで捜査しています。
2022年7月2日NHK
北九州市小倉南区の郊外で散歩中の犬が路上に落ちていた青いペットフードのようなものを食べた直後に泡を吹いて死んだとの情報が「あなたの特命取材班」に寄せられた。住民は区役所や警察に相談したが、具体的な対応は取られなかったという。いったい何があったのか。現場を訪ねた。
2020年6月14日西日本新聞
などなど実際に起こっています。
愛犬はそのおやつに毒や針が入っているなど知りません。
路上に大好きなおやつやドッグフードを拾い食いしたときに無理やり口を開けて取り出す自信はありますか?
また、散歩中に身体に針や棘が刺さることだってあります。
それを速やかに抜きたくても噛んでこようとしたらできません。
噛んでくるので歯磨きができず、歯石が溜まり全身麻酔をかけ獣医師さんに除去をお願いすることになります。
できる限り、その回数を減らしたいですよね。
リラックスポジションはどこを触れても飼い主のなすがままにすることで、これらのリスクを減らす大切なトレーニングとなります。
テンションをコントロールする
「うちの子元気で興奮したら止まらないんです」といった相談を受けます。
元気なことはいいのですが、ひとりでにテンションが上がり続け、興奮し、走り回ったり、吠えたり、いろいろなものを噛んだりして散々暴れた挙句、勝手にテンションが下がるのは良くありません。
主導権は常に愛犬が持っていることになり、その要求はあらゆるシーンで強化されてしまいます。
また、テンションが上がっていると飼い主のことが頭から抜けてしまう子が多いです。
その結果、興奮しながら道路に飛び出したり、ドッグランで喧嘩を始めたりしても飼い主の声が耳に届かず止めることも呼び戻しをすることもできません。
その状態は極めて危険で、愛犬はもとより他の犬や人を傷つけてしまう可能性もあります。
リラックスポジションは「テンションをコントロールするのは飼い主であって愛犬自身ではない」ことを理解させる大切なトレーニングとなります。
では、具体的に方法をお伝えします。
リラックスポジションの方法(初級編)
最初からリラックスポジョションが好きなワンコは稀です。
名前を呼んで抱えポジションに移行すると「名前を呼ばれると嫌な姿勢をさせられる」と条件付けされる可能性もあります。
最初のうちは、名前を呼ばず前触れなく抱えるようにしてください。
できれば、背もたれがある場所が理想です。(腰がだるくなってきます。)
ひとりが先に座り、もうひとりが愛犬を渡しても大丈夫です。
大型犬などの場合はふたりがかりで仰向けにしても構いません。
足の上でも、あいだでもどちらでも大丈夫です。
不安定だと犬も落ち着きにくくなりますので、しっかりと固定してあげることが重要です。
大切なことは、起きあがろうと動いても、暴れても絶対に固定を続けてください。
そこで解除してしまうと「飼い主は自分より力(物理的)がない。」と認識し、より抵抗するようになります。
「抵抗しても仕方ない、諦めて受け入れよう」と思わせてください。
それが、「どこを触られても嫌がらない子にする」第一歩となります。
落ち着かない場合は、愛犬の胸に手を当てて「落ち着きなさい」と声をかけながら優しくほんの少し押してください。
噛んでこようとしたときは、愛犬の顎の下で親指をクロスさせ少し上に突き上げてください。(顎が上がるイメージ)
そうすることで、物理的に噛めなくなります。
「あなたの歯は武器にはなりませんよ。」と教えます。
子犬でも2、30分、成犬ならば1時間は平気です。(子犬は排泄を先に済ませてあげてください。)
この体勢をしばらく続けてください。
愛犬をずっと見つめている必要はありません。
ときにはテレビを見たりの「ながら」でも大丈夫です。
肝要なことは、落ち着いていない状態(隙を見て逃げようとしている)のあいだはこの姿勢を解除しないということです。
理想は仕事に行く前の忙しいタイミングではなく、食後など少し余裕のある時間に取り組むことが良いでしょう。
愛犬が力が抜けた状態(後ろ足がダラっと広がっていることが目安)になれば解除してください。
そのとき「よし」と言いながら軽く胸をポンと叩いてあげるといいでしょう。
愛犬は体を「ブルッ」と振るわせて起き上がるはずです。
何日かリラックスポジョションを続けると愛犬が目を閉じて寝音を立てるようになります。(早い子で数日)
そうしたら、抑えている手や、固定している足を緩めてみてください。
すぐに目を覚まし起きるようでしたら未達です。(犬は狸寝入りが得意です。)
緩めても、そのままの状態でしばらく寝ていれば成功です。
「リラックスポジョション」の言葉通り、愛犬は落ち着いて、飼い主に身を預け安心した状態でお腹を上に向けて寝ていることでしょう。
これで初級編は終了となります。
興奮してきて「スイッチが入ったな?(飼い主の声が届かない状態)」と思ったら、リラックスポジョションを行って落ち着かせてください。
これがテンションをコントロールする第一歩となります。
しつけにはゴールがある
しつけには必ずゴールがあります。
よくあるのが、中途半端な状態で次のしつけを始めることです。
愛犬は「この飼い主は三日坊主だ」と認識して真剣に取り組まないこともあります。
必ず、最後までやり遂げて「飼い主は根性あるな」と思わせる必要があります。
そうすれば、新しいしつけを行っても「飼い主には敵わない」と理解してスムーズに受け入れてくれるはずです。
子犬がきたタイミングで行う基礎トレーニングは「リラックスポジョション」を中心に「トイレトレーニング」「まて」「クレートトレーニング」など取り組んでみてください。
まとめ
このリラックスポジョションは家族全員で日替わりで行なってください。
小さなお子さんがされる場合は親が補助に入るなどして頑張ってみてください。
関係性ができていないあいだの抱っこは「百害あって一利なし」です。(その理由はまだ別の機会で)
抱っこをする時間があったらこの姿勢をしてください。
次はリラックスポジョション中級編となります。
「どこを触られても嫌がらない子にする」ためのトレーニングを行なっていきます。
初級編を終了したら次のチャレンジ頑張ってください。
リラックスポジョションの仕方動画をご用意しています。ぜひご覧ください。(なお、中級編以降の内容も含まれています。予習がてらご覧ください!)