「愛犬の名前を呼べば喜んで戻ってくる」
そんな関係、憧れませんか?
当然ですが、我が家に来たときから教えなくてもできる子はいません。
正しいトレーニング方法で地道に行う必要があります。
「急がば回れ」
です。
家族の一員として愛犬と暮らす以上、呼び戻しができるようにすることは飼い主の「義務」だと私は考えています。
ぜひ、下記解説をご覧になって地道に取り組んでみてください。
呼び戻しはとても重要
私は「呼び戻し」と「まて」はとても重要なトレーニングだと考えています。
なぜなら「愛犬の命を守る」ために必要だからです。
一昔前は外で繋がれ飼われているのが多かったですが、今は家の中でノーリードが主流です。
また、ドッグランのような自由に遊ばせる施設も増えてきました。
その結果、ノーリードによるトラブルが増加しています。
具体的には、玄関やドッグランのドアを開けた途端、飛び出して事故にあったり、ノーリード同士の犬が喧嘩を始めたり、他の飼い主や子供を噛んだりといったケースです。
リード着用時であればリードコントロールでなんとか回避できたことも、ノーリードだとそうはいきません。
1回呼んだだけで戻ってきますか?
あなたの愛犬はどれに当てはまりますか?
- どのようなシチュエーションでも1回で戻ってくる
- シチュエーションによっては2・3回呼んで戻ってくる
- おやつを見せびらかせて何とか・・・。
- シチュエーションによっては戻ってこない
- 家の中ではできて、外ではできない場合も多いです。
- どのような状況下でも戻ってこない
お分かりだと思いますが、理想は「どのような環境下でも1回で戻ってくる」です。
必要となるのは非常時
しつけは「命を守るため」とお伝えしましたが、裏を返せば「非常時」ということになります。
- 愛犬が道路を飛び出すとき
- 他の犬と喧嘩を始めそうなとき
- 他の人や子供を噛もうとしているとき
などで、1回で呼び戻しができなければ、命に関わる事故や、相手の犬やお子さんに大怪我を負わせる可能性がある状況下ということになります。
もちろん「ドッグランにも行かなければ、玄関ドアの開閉には気を使っているので大丈夫」と思われる方もいるかもしれません。
ですが「散歩中に首輪が抜けたり、リードを持つ手を不意に話したりはしない」と絶対に言える人はいないと思います。
いざというときに「うちの子の命を守れない(広域には他人やお子さんに大怪我を負わせ、加害犬にさせたくないはず。)」のでは後悔しますし、飼い主の責任放棄と言われても仕方ありません。
ペットではなく家族の一員として一緒に暮らす以上、私は「呼び戻し」ができるようにすることは飼い主の義務だと考えています。
それでは、今から具体的なトレーニング方法を解説します。
呼び戻しを行う上での心得とポイント
当然ですが、いきなり呼び戻しがマスターできるわけではありません。
まずは、下記心得とポイントを覚えてください。
- いきなり大学受験を目指さない
- 名前は1回しか呼ばない
- 飼い主の声を確実に愛犬の耳に届ける
- おやつは効果的なものを
- 最後まで徹底的に
1:いきなり大学受験を目指さない
例えば、最初からドッグランで他の犬もいるなか、ノーリードの状態で名前を呼んでも戻ってきません。
言うなれば、未就学児が大学受験から始めるようなものです。
大切なことは「失敗体験は極力させずに、成功体験を積み重ねること」です。
最初は小学校入学レベルから、100点をとり続けられる状態からスタートすることが肝要です。
小学校入学レベルとは、自宅内(あまり誘惑がない環境)でリードをつけた状態からと覚えてください。
2:名前は1回しか呼ばない
呼び戻しをする際、愛犬の名前を連呼する方がいます。
それはできる限りやめてください。
例えば、愛犬の名前が「ソラ」だったとします。
一度「ソラ」と呼んでも反応せず、「ソラ・ソラ」と2回呼んで戻ってきたといします。
それが何回か続くとします。
そうしたら、愛犬は自身の名前を「ソラ」ではなく「ソラ・ソラ」と認識する可能性があります。
特に子犬のうちは、自身の名前をしっかりと理解していません。
正式名称を呼んであげることで、名前に対する感度をを高めていく必要があります。
かと言って、1回呼んだだけで帰ってこないことだってあります。
その場合は「ソラ」と言ったあとに、少し間隔をあけて、再度「ソラ」と言ってあげてください。
ポイントは「間髪をいれず連続で言わない」と言うことです。
「名前を一度呼ぶ=飼い主の元にいく」を理想とし条件付けしたいと考えています。
3:飼い主の声を確実に愛犬の耳に届ける
私は、少年野球の指導員も行っているのですが、例えばセカンドとショートの間にフライが飛びお見合いをして間にボールが落ちることがよくあります。
「オーライ」「任せた」といった声を出し合ったか?
と聞くと出していると言います。
ですが「お互いの声は聞こえたか?」と尋ねると「聞こえていない」とも言います。
そんなとき「大切なことは言ったことではなく、相手に確実に伝わっているかだよ」と指導します。
伝えたい人に伝わっていないのであれば、それは単なる独り言でしかありません。
愛犬への指示も同じです。
「愛犬が言うことを聞かない」と相談に来られる方は大抵声が小さかったりして、そもそも愛犬の耳に届いていなかったりします。
「犬は耳がいいから大丈夫じゃないの?」
と思われるかもしれませんが、犬だって関心がない音はただの騒音でしょうし、聞こえないフリだってします。
重要なことは「しっかりと愛犬の耳に届く(注目する)、声量を出す」ということです。
さらに、声のトーンにも意識する必要があります。
犬は日本語や英語など正確に言葉を理解することは難しいですが、声質は敏感に感じとります。
よく、遊ぶときも、褒めるときも、叱るときも同じ高低の方がいます。
犬からすれば飼い主の「喜怒哀楽」を感じとることができず、何を求めているのか分かりづらく戸惑います。
声が小さく、感情も読み取りずらければ、飼い主に対し無関心へと変わり、指示を無視したとしてもやむを得ません。
欧米人には犬の扱いに長けている人が多いですが、国民性として感情表現が豊かであることも大きいと思います。
愛犬を呼ぶときの声質は「明るく高め」が基本です。
「飼い主の元に戻るといいことがあるぞ」を理想とし条件付けしたいと考えています。
なお、「低めに素早く」発することがときには求められることもありますが、それはまた別の機会で解説します。
まずは「声は伝わるぐらい大きく、明るく高め」を徹底しましょう。
4:おやつは効果的なものを
私は基本、しつけやトレーニングにおやつを使用することには否定的です。
理由は下記記事をご覧ください。
ですが、呼び戻しのとっかかりとしては有効だと認識しています。
炭を早くおこすための着火剤のような役割が期待できるからです。
「明るく呼ばれたら楽しいことが待っている」のきっかけ作りだとお考えください。
なお、最終的にはおやつがなくても戻ってくるよう、抜いていきます。
おやつは普段あげないものにしてください。
例えば、ドッグフードだと日常的に与えているものなので「戻ってくる動機」としては効果が薄いです。
理想は呼び戻しのときにしかもらえない特別なもの、かつチーズのような匂いが強めのものがベストです。(チーズはほとんどのワンコが大好きです。)
1回に与える量は米粒ぐらいで大丈夫です。(与えすぎないように!)
最近は犬用チーズも多数売られていますので、それらを使用してください。
もちろん、チーズ以外でも匂いが濃く、小さくちぎりやすいもので、愛犬のアレルギーなど影響ないものでしたら何でも大丈夫です。
逆に、ボーロのように匂いが弱く、細かくしようとするとパサパサとして崩れてしまったり、すぐに飲み込めないおやつは不向きとなります。
「子犬の頃からおやつを与えていいの?」と思われる飼い主もいるかもしれませんが、特に身体的に控えたほうが良い場合を除き、このトレーニングの時だけ与えるのはより「レア感」を演出できるので有効です。
ぜひ、愛犬の目の色が変わるようなおやつを見つけてください。
心得5:最後まで徹底的に
これは、どのトレーニングにも言えることですが近道はありません。
できるようになるまで、同じことを徹底的にすることがとても、とても重要です。
例えば、10回中9回しっかりしても、あと1回中途半端だとすれば、犬はその中途半端な1回を重視します。
「だって、この前戻ってこなくても良かったじゃん」となります。
「呼び戻しは非常時に真価が問われるもの」
その1回が大事故に繋がるかもしれません。
妥協を許さず、できるようになるまで徹底して取り組むようにしてください。
呼び戻しトレーニング方法
それでは具合的なトレーニング方法を解説します。
大切なことは、極力失敗(戻ってこない)を減らし、成功体験を積み重ねることです。
ステップは下記の通りです。
- 幼稚園(保育園)入学(屋内外ショートリード)
- 小学校入学(屋内ノーリード)
- 中学校入学(屋外ロングリード)
- 高校入学(屋外ノーリード)
- 大学入学(おやつを抜く)
ステップ1:幼稚園(保育園)入学(屋内外ショートリード)
まずは、普段散歩で使用しているショートリードを着用し行います。
環境は屋内が基本ですが、屋外の場合はなるべく人や犬の少ない場所(庭など)・時間帯を選んでください。
飼い主が2人以上いる場合
1人がリードを持つ役、もう1人が呼ぶ役に分かれます。(途中で交代します。)
飼い主が1人の場合
愛犬にショートリードをつけた状態で待機してください。
愛犬をしゃがんで両手を広げて呼ぶ
愛犬を呼ぶ役の飼い主はしゃがんで(できれば両手を広げ)、聞こえる声量で、明るく高めのトーンで愛犬の名前を1回呼んでください。
しゃがむのは、犬は上から見下ろされると警戒心を抱きやすいので、できる限り同じ目線で呼んであげる必要があるからです。
また、両手を広げるのは言葉とジェスチャーを交えた方が、犬も認識しやすいからです。
さらには「犬は言葉よりもジェスチャー(ハンドシグナル)に対し、より正確に反応している」という研究成果もあったりします。
どうしても声が届きにくい環境などではジェスチャーが効果を発揮します。
1回で戻ってきたら
明るく迎え撫でてあげてください。(リード持ち役も一緒に近づいてください。)
合わせて、おやつを一つ与えてください。
1回で戻ってこなかったら
リード持ち役が、呼んでいる飼い主のもとへ連れて行ってください。
1人の場合は、リードを手繰り寄せ近づけてください。
愛犬が来ましたら、明るく迎え撫でながらおやつを一つ与えてください。
ポイントは「呼ばれたら飼い主のそばに来て楽しいことがある」と思わせることです。
このやり方ですと確実に誘導できるので失敗しません。
何度か繰り返す
目安としては犬の集中力を考えるとトータルで5分から10分程度、何度か繰り返してください。
飼い主が複数いる場合は、交代して行ってください。
犬が飽きてきたら、10分以内であっても終了しましょう。
名前を呼んでもいない(ジェスチャーもしていない)のに勝手に戻ってきた場合
何度か行っているうちに犬は理解力が高いので、呼ばれる前に戻ってくる場合があります。
その場合はおやつもあげず、特に明るく接することもせず様子を見てください。
しばらくして、呼び役の飼い主から離れたタイミングで改めて呼んでください。
「名前を呼ばれたら戻る」を徹底しましょう。
誘導せずとも名前を呼んで戻ってきたら幼稚園(保育園)卒業です
いよいよ小学校入学です。
ステップ2:小学校入学(屋内ノーリード)
次はノーリードによる実践です。
ですが、外ではまだまだ刺激が多すぎますので屋内のみでトレーニングとなります。
まずは1部屋で
中学1年生はドアを閉めて1部屋からスタートしましょう。
愛犬を1回呼ぶ
愛犬がノーリードで自由に行動している状態の少し離れた場所から、名前を呼んでみてください。
戻ってきたら、明るく接しおやつを与えてください。
1回呼んで戻ってこなかったら
名前を呼んだ飼い主が、愛犬の側まで近寄り、カラー(首輪)を持って呼んだ場所に連れ戻してください。
「名前を呼ばれたのに戻ってこなくていい」という事例を作ってはいけません。
呼び戻しは「非常時」に必要なのです。
逃げようとしても、必ず確保してください。(逃げ切れないためにも1部屋から始めます。)
呼び戻しがうまくできない人は、ここを「なあなあ」にしている方がほとんどです。
呼ばれたら「100%戻る」以外の選択肢はありません。
逆に、「呼び戻す」あるいは「連れ戻す」自信がないタイミングであれば名前を呼ばないでください。
確実に愛犬の体(首輪)を触る
名前を呼んで戻ってきても、愛犬の体を触らずおやつをあげることはやめましょう。
戻ってきても飼い主の直前でストップし、捕まらない距離感を保ち、もらうものだけもらい逃げていく子がいます。
それが習慣化すると肝心な時(非常時)に確保できません。
戻ってきたら、確実に体を触る(首輪を持つ)など、飼い主のコントロール下に必ず入れるようにしてください。
何度か繰り返す
幼稚園(保育園)と同様です。
部屋数を増やす
1部屋で戻ってくるようになれば、2部屋、家全体とエリアを広げてみましょう。
視覚的に見えない状況下ではジェスチャーではなく声だけが頼りです。
しっかりと愛犬の耳を開かせることができるよう、大きな声で、より明るく、楽しそうな声のトーンで呼んでみてください。
1回で戻ってこなければ、別の部屋であろうが必ず確保して呼んだ場所まで連れ戻しましょう。
どの部屋にいても、名前を呼んだらあとすぐにやってきたら、小学生卒業です
さあ、中学進学です。
ステップ3:中学校入学(屋外ロングリード)
呼び戻しトレーニングも折り返しです。
まず、ロングリードを用意してください。
長さは任意ですが、使用されるスペースに応じてお選びください。
ロングリードをつけ、自由にさせる
ロングリードが使用可能な公園や広場で行うようにしてください。
愛犬を1回呼ぶ
聞こえる声で、明るく楽しそうに、両手を広げて呼びましょう。
戻ってきたら、しっかりと愛犬を確保した状態で、スキンシップをはかりながらおやつを与えてください。
呼ばないのに戻ってきた場合、おやつはNGです。
続けて行う時間は約10分、集中力が切れる前に一旦やめ、しばらくした後に再開するようにしましょう。
1回呼んで戻ってこなかったら
戻ってこなかったら、ロングリードを釣りのように手繰り寄せてください。
「呼ばれたら、必ず戻ってきている」という条件付けを徹底しましょう。
もちろん、この場合もおやつは与えてください。
様々な環境で行う
できるようになってきたら、近くの広場や公園以外の場所でもチャレンジしてください。
どこでも、どんな状況下でも名前を1回よんで戻ってきたら、中学も卒業です
高校に行きましょう。
ステップ4:高校入学(屋外ノーリード)
終盤です。
数週間でここまでくることもあれば、数ヶ月かかる場合もあります。
その早さが重要ではなく、諦めず、地道に、根気よく行い、ここまで辿り着けたことに意義があります。
愛犬との「100%」の信頼関係も相当に構築されているかと思います。
高校は一気にハードルが上がりますが、決して焦らず、難しようであれば、中・小学に戻ることも全く問題ありません。
大切なことは「失敗させない」ことです。
ぜひ、その気持ちをベースに持って取り組みましょう。
ドッグランで自由にしている愛犬を1回呼ぶ
まずは、できる限り他のワンコがいない時間帯のドッグランで行い、近い距離にいる愛犬を呼んでみましょう。
戻ってきたら大成功です。
ちょっとずつ、距離を伸ばしたり、他のワンコもいる状態のなかで行ってみましょう。
1回呼んで戻ってこなかったら
愛犬もノーリードなので、逃げまわられる可能性だってありますが必ず確保してください。
逃げ切れる成功体験を掴むと、ますます逃げるようになります。
なお、確保するためにおやつで釣るのはやめてください。
確保は自身の力で頑張って行い、そのあと名前を呼んだあたりに連れ戻したときに与えてください。
呼び戻しゲームをしてみよう
「ドッグランは何をするために行く場所?」
と言えば、私は「ノーリードで愛犬と一緒に飼い主が遊ぶ場所」だと答えます。
他人の犬と遊ばせる場所ではないと考えています。
ぜひ、一緒に「呼び戻しゲーム」や「おもちゃ(飼い主)探しゲーム」をしてみてください。
遊び方など下記記事で解説しています。
ステップ5:大学入学(おやつを抜く)
最終課程です。
「おやつがないと言うことを聞かない」と言う相談を受けますが、理由は簡単でおやつを抜く作業をしていないからです。
手っ取り早く言うことを聞かせるにはおやつな便利なツールですが依存するのはNGです。
呼び戻しに関しても「飼い主が持っているおやつのために戻るけど、持っていなければ戻らない。」と言う犬は多く、おやつを見せびらかしてようやく「捕まえる」といった光景も見られます。
おやつはあくまで「きっかけ」作りであって「生涯のアイテム」ではありません。
おやつがなくても呼び戻しができるようしっかりと「抜く」作業を行なっていきましょう。
おやつを与えない回数を減らしていく
それぞれのトレーニング課程(幼稚園・保育園から大学まで)で、例えば10回中10回与えていたおやつを、まずは10回中9回に減らしてみてください。(部分強化と言います。)
それでも、影響なく戻ってくるのなら、与えない回数をさらに減らしてください。
10回中8回・・・7回・・・6回といった具合に。
減らす回数を一気に増やしすぎて、呼び戻しがうまくできなくなれば、一旦減らすのをやめ、時には増やすなどして「失敗しない」よう調整をはかってください。
おやつなしでも戻ってくる子にしよう
おやつを与える回数が10回中0回になるまで根気よく続けましょう。
そこまで来れば、愛犬は「名前を呼ばれれば戻る」が条件反射のように刷り込まれているはずです。
おやつのためではなく、飼い主に下に戻るのが「当たり前」となっていることでしょう。
ドッグスポーツに参加しよう
愛犬との絆を強化するために作ったドッグスポーツが「ドッグタイムレース」です。
ぜひご参加検討してみてください。
詳しくは下記記事をご覧ください。
まとめ
幼稚園から大学生まで。
その道のりは大変かもしれませんが、しつけやトレーニングがうまくいかない主な原因が「中途半端」と「根気まけ」です。
三日坊主で、新しいしつけテクニックを次から次へと披露すればするほど、愛犬は「どうせ、またすぐに飽きるだろう」っと思い本気で向き合ってくれないかもしれません。
近道はありません。
命を守るための大切な「呼び戻し」です。
徹底して取り組んでみてください。