「シャイだけど気が強い犬」にしてしまう飼い主のNG行動

〜先天的にシャイな子を受け入れるという視点から〜

「うちの子、臆病なのに吠えるんです」
「膝の上では強気なのに、一人になると固まってしまう……」

しつけ教室でよく耳にするのが、この“二面性”を持つ犬の行動です。私はこのタイプを「シャイだけど気が強い犬」と呼んでいます。

こうした行動は飼い主の接し方が大きく影響しますが、それだけではありません。実は犬の中には 生まれつきシャイな気質を持つ子(先天的にシャイな子) が存在し、後天的に劇的に変えることは難しいということが研究で示されています。


目次

「シャイだけど気が強い犬」とは?

シャイな犬は普段はとても慎重で、新しい環境や見知らぬ人・犬に対して距離を取ろうとします。ところが飼い主のそばにいるときは、防御的に吠えたり唸ったりと「気が強い」ように見えることがあります。

しかし飼い主がいなくなると、さっきまでの強気が消え、固まって動けなくなったり尻尾を丸めて震えてしまう。──この「二面性」こそが、“シャイだけど気が強い犬”の特徴です。


経験談:小型犬に多い理由

私のしつけ教室に来る犬たちを見ていて、実感することがあります。
それは「シャイだけど気が強いタイプは、小型犬に多い」ということです。

小型犬は抱っこされやすい

小型犬は飼い主が気軽に抱っこできるため、怖いときに「すぐ抱き上げてもらえる」経験を繰り返します。抱っこされると安心感を得られると同時に、相手を見下ろす形になり、防御的に唸ったり吠えたりしやすくなります。

大型犬との違い

一方、大型犬は簡単に抱っこできないため、自分で「避ける」「距離を取る」といった行動を選ばざるを得ません。結果的に“小型犬の方が強気に見えやすい”傾向があるのです。


飼い主がやりがちなNG行動

「シャイ」であること自体は問題ではありません。問題は、飼い主の接し方によって“気が強くさせてしまう”ことです。

怖がったらすぐ抱っこする

抱っこされると「安心+強気」がセットになり、唸りや吠えが強化されてしまいます。

吠えたときに慰める

「大丈夫だよ」と撫でたり、抱っこすることで、「吠える=飼い主が反応してくれる」と学習しやすくなります。

無理に近づける

「慣れさせよう」と強引に接触させると、トラウマとなり逆効果。

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膝の上や足元を特権ゾーンにする

吠える場所=特権ゾーンになると、強気な行動が固定化します。

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先天的にシャイな子がいるという事実

ここで理解しておくべき大切なことは、犬の中には先天的にシャイな気質を持つ子が存在するということです。

研究から分かっていること

  • 犬の恐怖性やシャイさには 中程度から高めの遺伝的影響(遺伝率0.25〜0.5程度) があるとされています。
  • 幼少期の社会化やトレーニングで改善できる部分はあるが、根っこの「シャイさ」が完全に消えるわけではありません。

つまり「犬類みな兄弟」──すべての犬が同じようにフレンドリーになれるわけではない、ということです。

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限界と現実的な期待

  • 「怖がらない犬」にすることは難しい
  • 目標は「怖くても落ち着ける」「吠える頻度や強さを減らす」こと
  • 先天的な気質を直すのではなく、受け止めてサポートする姿勢が大切
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飼い主にできること

  • 個性として受け止める:「うちの子は慎重なタイプ」と理解する
  • 成功体験を積ませる:落ち着けた瞬間を褒める
  • 自立心を少しずつ育てる:短時間離れても過ごせる練習を取り入れる
  • 冷静な態度を保つ:飼い主の不安は犬に伝わる
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まとめ

  • 犬の中には先天的にシャイな子が存在する。
  • 飼い主の接し方次第で「シャイだけど気が強い」行動が助長されることも多い。
  • 小型犬は抱っこしやすさから“強気”が強化されやすい。
  • 「犬類みな兄弟」ではなく、それぞれに生まれ持った気質がある。
  • 飼い主が「直す」のではなく「受け止める」ことで、犬は余計なストレスを抱えずに暮らせる。

しつけ教室には「他の子と仲良くできないことが悩み」という飼い主さんも一定数訪れます。
その都度私はこうお伝えしています。

👉 「シャイは個性。悪いことではありません。ただし、気を強くさせてしまうのはやめましょう。」

すべての犬が同じようにフレンドリーである必要はありません。その子なりの安心できる関係を築いていけば十分です。飼い主がそう理解した瞬間、犬は肩の荷をおろしたように自然体でいられるようになります。

犬の行動を観察し、理解することが必要です。

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