「『しつけ教室』と『しつけ方教室』の違いって何だろう?」
っと思われる方もいるかもしれません。
厳密な定義はありませんが、教える対象が「犬」なのか「人(飼い主)」なのかが主な違いとなります。
なぜ「しつけ方教室」に参加する必要があるのか?
その理由を解説します。
学ぶのは愛犬ではなく飼い主
しつけ教室に参加される飼い主さんあるあるなのですが、うちの子が気になってトレーナーの話をしっかり聞けていない方がいます。
説明や解説をしていても目線は常に愛犬に向いている方も多く、話が頭に入っていない方も見受けられます。
ですから、私が実施していたしつけ教室の冒頭では、「愛犬を見るのはそこそこにして、せっかくお金を払って参加されているんですから、その分しっかり学んで帰りましょう。」と伝えています。
なぜなら、しつけ教室で学ぶのは「愛犬ではなくて飼い主」だと私は考えているからです。
たまに「犬が学ぶ場所」だと思われている方がいますが違います。
例えば、ドッグトレーナーや訓練士が愛犬を預かり、一通りのトレーニング(「まて」や「ふせ」など)を施して戻したりしますが、飼い主が同じようにできるかは別問題です。
「ドッグトレーナーの言うことは聞くけど、飼い主の言うことは聞かない」子は実際多いです。
犬は利口になればなるほど人を見て、態度を変えます。
飼い主が無知のままだとなめられます。
「良い子になってほしい」と願うのであれば、自分自身もその「良い子」にふさわしい飼い主なのかが問われると思ってください。
問題行動の原因は飼い主の理解不足が主な原因?
問題行動とは飼い主にとってそう思えるだけで、犬にすれば自分のとるべき行動が「問題」だとはそもそも感じていないはずです。
むしろ、その行動の原因を作り、助長させているのが飼い主本人だったりします。
吠えることや唸ること、噛む行為などで悩まれている方が多いですが、そのときの対処法を聞くとことごとくやってはいけないことをしていたりします。
例えば、吠えているときや後に目を合わせたり、他の犬や人に唸ったときに抱っこをする行為。
愛犬からすれば「もっとやれ」と促されていると勘違いしても無理はない行動だったりします。
詳しくは下記記事をご覧ください。
飼い主の言っていることと、求めていることがチグハグであれば愛犬は混乱と共に不信感を抱きます。
言動を一致させ、信頼される飼い主になるためにも正しい知識を学ぶ必要があります。
「しつけ教室」ではなく「しつけ方教室」
「しつけ教室」と「しつけ方教室」の違いはドッグトレーナーによって多少認識は異なるかと思いますが、「犬主体か飼い主主体」かの違いだと考えてください。
「犬主体」の教室は犬を連れてくること前提となりますが、「飼い主主体」の場合は必ずしも連れて来る必要はありません。
ちなみに、私が行った教室のほとんどが「しつけ方教室」ベースでした。
犬がいなくても十分成立します。
むしろ、飼い主だけの参加で集中してもらった方が良かったりします。
そして、できることなら、愛犬と一緒に暮らしているご家族全員に参加してもらいたいと願っています。
なぜなら、家族全員が同じ知識を持って一貫性を持って愛犬と接することが重要だからです。
例えば、同じ行動に対し「お父さんは褒めてくれたけど、お母さんには叱られた。」となればどうでしょう。
愛犬は困惑しながらも、たいていは褒めてくれる(甘やかしてくれる)方の意見を採用します。
逆に、家族が同じしつけ方を行えば、愛犬にとってこれほどわかりやすいことはありません。
私はその方向に促すのがドッグトレーナーの仕事だと考えています。
もちろん、深刻なケース(本気噛みをする)は、専門的なトレーナーや訓練士に預けて矯正してもらうことも必要です。
ですが、基本は愛犬がドッグトレーナーから直接「しつけ」されるのではなく、「しつけ方」を学んだ飼い主が行うものだとご理解ください。
愛犬をいたずらに「擬人化」しない
犬を人間のように接すること誰でもあると思います。
それは私もあります。
ただ、あくまでしつけの基礎を理解した上での「擬人化ごっこ」です。
トレーニングは犬の行動学に基づいてきちんと行います。
確かに犬と子供の教育は共通することもありますが、別の生き物である以上根っこはことなります。
大切な家族の一員だからこそ、その違いを理解した上で接してあげることが極めて重要です。
擬人化し、人間流の育て方をした場合、先の章でも記載しましたが、愛犬が混乱し、飼い主にとっての問題行動となり、挙句手放すといった最悪な結末となることだってあります。
あくまで、しつけと人間っぽく扱うことは切り離すようにしましょう。
飼い主が変われば愛犬も変わる
今まで、何百という教室を一般の家庭犬向けに実施し、相談を受けてきましたが、特別レアなケースというのは稀で、ほとんどが想定範囲内のお悩みだったりします。
それらの多くは、飼い主が正しい知識を得て、愛犬の性格を把握して、一貫(ご家族がいる場合は全員)して取り組めば良くなるものばかりです。
「地道に取り組む」
簡単なようで難しいですが、それが王道です。
魔法のように劇的に、犬が勝手に良くなることを望まれる方もいますが、良くなった風に見せることはドッグトレーナーならある程度簡単にできます。
ですが、飼い主が本質を理解し、継続して行わない限り、また別の問題が発生しても対処できません。
求められることは「本質を理解した上での応用力」です。
愛犬は人間のように豊富な言語で飼い主とコミュニケーションをとることはできません。
だからこそ、犬の性格、行動習性、表現方法などを十分に学び、観察し、それらに基づいて接することが重要なのです。
「変わるのは愛犬ではなく飼い主」です。
それが真の信頼関係を結ぶ第一歩だと思い勉強し、実践してみてください。
まとめ
よく「大人になれば落ち着きますかね?」と聞かれたりしますが、私は「なりません」と答えます。
もちろん、おとなしくなる子だっていますが、基本ならないと思った方がいいです。
以前、パピーパーティーにマルチーズの子犬を連れてご参加いただいた飼い主がいました。
そのかたは、先住犬もマルチーズと暮らしていたのですが、その子はガウガウ犬で、子犬のときから手を焼いていたそうです。
「大きくなったらおさまるかな」
と考え、特に真剣に矯正することをしなかったらしいのですが、成犬になっても落ち着くどころか、ますます強化されていったとのこと。
やがて、老齢犬となり最後を看取るときがやってきたのですが、愛犬が苦しそうだったので体をさすってあげようと触ったところ、唸りながら息を引き取ったそうです。
そのことを酷く後悔し、同じ過ちを犯さないよう、次に迎える子はしっかりと犬のことを学びたいとご参加されました。
いま「犬の行動学」を学べる本はたくさん出版されていますし、それをベースにしたしつけ方教室も実施されています。
本質を理解すれば、どのような性格の子にも柔軟に対応できる応用力も身につきます。
ぜひ、愛犬ではなくご自身が学ぶという姿勢で取り組んでみてください!