私自身、ドッグイベントを立ち上げたのもそもそも子犬の社会化教育を普及させるべく「パピーパーティー」を実施したのが始まりです。
犬の行動学を日本に広めた第一人者である渡辺格氏に指導を仰ぎながら、コンパニオンドッグスクールプレイボゥを設立された故森山敏彦さんのご協力を得て日本で初めて開催いたしました。
あらから20年以上が経過します。
今では「社会性を身につけさせる」という重要性を認識し、パピーパーティーに参加したり、ご自身で取り組まれてる方も増え喜ばしく感じています。
一方、本来の目的とは少しずれた認識をお持ちの飼い主も増え、結果愛犬を苦しめたりトラウマにさせるといったケースも目立ってきています。
「良かれと思って取り組んだことが逆効果だった」となるのは飼い主も望んでいないと思います。
特にシャイ(臆病)な子の飼い主がそのような気持ちを持たれていることが多いです。
今回は、その誤解が何なのか、注意すべきことなどを解説します。
社会化の目的にないもの
社会化の目的に入っていないもの、それは「他人の犬と仲良くさせる」ことです。
しつけ方教室で「犬友達ができないのは社会化不足だから」と考え相談に来られる方が多くいらっしゃいます。
それは間違いです。
「犬友達」ができないのはそれがその子の性格だからです。
先天的にシャイ(臆病)な子は一定数います。
人間に置き換えてみてください。
人見知りの方は基本大人になってもそのままだったりしませんか?
ワンコも同じです。
他の子犬と触れ合い続けることで一定数のワンコはフレンドリーになる可能性はありますがごく一部だと思われます。
ほとんどの子はむしろ「嫌だな」と考えているはずです。
「人類皆友達」的な人が近づいてきて、いきなり肩を組まれて「今日から仲間だぜ」とか言われても私なら引きます。
距離をどんどん詰めてきて、望んでいないのに執拗にスキンシップを求めてくるワンコがいたら正直「ウザい」と思っているかもしれません。
大切なことは「うちの子は他の犬と友達になりたがっているけど、それがうまくできず悩んでいる。」と勝手に思い込まないことです。
実際、飼い主が無理に他の犬との交流を深めようとして愛犬を傷つけてしまう事例が増えています。
一生のトラウマを作りに行っている?
パピーパーティー参加者からの相談として「いろんな子犬に追いかけられ何度も追い詰められて恐怖のあまり隅っこで固まってしまった。」「ある犬種のワンコに噛まれ、それから同じ種類の子を見ると吠えたり、唸るようになった。」など多くありました。
私の先住犬も子犬のときにある犬種に噛まれ、それからその犬種は亡くなるまで苦手でした。
防げただけに、今でもそのことは後悔をしています。
「他のワンコと仲良くさせることも重要だ。」と思いすぎ、本人の意思に関係なく、どのようなタイプの子犬とも無理やり触れ合いをさせることで一生の傷(トラウマ)をつけてしまうことになれば本末転倒です。
子犬同士であっても、性格的に合わない子もいますし、攻撃的だったり、しつこかったりして怪我や嫌な思いをすることもあるということを念頭におき、盲目的に会わせないことが重要です。
犬社会のルールを学ばせる
他のワンコとふれあいをさせる目的は「仲良くさせること」ではなく「不要な争いを避けるため犬社会のルールを学ばせること」だと私は考えます。
シャイな子は、他のワンコと友達になりたいと思っているのではありません。
望んでいることは「これ以上近づかないで」といった「適度な距離感」だと思います。
それを目線や耳、尻尾や姿勢を動かすなどのいわゆるカーミングシグナルを使って表現しています。(わかりやすいところで言えば相手のワンコに対し目を会わせない「無視」をしているなどです。)
そのシグナルを発したワンコには不用意に近づかず一定の距離を保つ必要があるわけですが、それを知らないワンコはズケズケと入り込んできます。
そして、「なんで理解してくれないんだ!」とばかりに追い込まれた犬は攻撃行動に転じることだってあります。
私の経験上、攻撃的に噛む子より、シャイな子が追い込まれて噛む子の方が多いです。
従って、「近寄らないで」というシグナルを出すワンコには近づかない(近づけさせない)といったルールを学ばせる必要があるのです。
フレンドリーな子犬には嫌がっているというシグナルを、シャイな子犬には嫌だというシグナルを双方覚え理解させる場がパピーパーティーだと考えます。
ドッグランなどで嫌がっているワンコを執拗に追いかけたり、「無視する」などのカーミングシグナルを発せずいきなり噛んだりする子がいます。
それらの子を「社会化不足」と私は呼んでいます。
元気すぎる子とシャイな子を一緒に触れ合わせて良い?
私は、シャイな子と元気すぎる子を一緒にするメリットよりデメリットの方が大きいと考えます。
なぜならシャイな子は追いかけられたり、プロレスごっこを無理やりされたりしてトラウマとなり、元気な子はよりマウントを取り始める可能性もあります。
度が過ぎた場合、母犬代わりとなる成犬が叱ったり、人がカーミングシグナルを使って止める必要があるのですが、じゃれあっていると勘違いをしそのまま放置していることも多く、シャイなワンコにとっては地獄です。
助けてくれない飼い主と信頼関係を結ぶのは難しく、自分の身は自分で守らなければならないと思うかもしれません。(ただし、助けることは抱っこすることとは違います。下記記事参照)
もちろん、それらのケアを十分に行なってもらえるパピーパーティーやしつけ方教室に参加することは良いことだと思います。
もし、独自に交流を深めたいと思っているのならば「性格が似たようなワンコ」と触れ合わせるようにしてください。
くれぐれもドッグランにいきなりデビューをさせないでください。
取り返しがつかなくなる可能性もあります。
まとめ
私は他人のワンコと仲良くさせることが愛犬の幸せだと思っていません。
また、それが社会化でもありません。
「社会性を身につけさせる」ため他にすべきことがたくさんあります。
シャイな性格であるうちの子を受け入れて、その子にあった社会化教育を施し、家族で楽しく過ごすことを考え暮らしていくことをおすすめします。