子犬の性格形成に影響大!きょうだい関係とリッター効果を解説

「うちの子は、きょうだい犬とそっくりな性格なんです」
「他の子もみんな吠えっぽいって聞いて、妙に納得しました」
──そんな話を聞いたことはありませんか?

実は、同じ母犬から生まれた“きょうだい犬”たちに共通する性格傾向は科学的にも報告されており、それは**「リッター効果(Litter Effect)」**と呼ばれています。

今回は、犬の性格形成に大きく関わるこのリッター効果について、科学的な根拠と共に深掘りしていきましょう。

目次

リッター効果とは?

リッター(litter)とは、一度の出産で生まれた子犬たちのグループのこと。つまり「リッター効果」とは、同じリッター(きょうだい犬)間で見られる性格や行動パターンの類似性を指します。

興味深いのは、この影響が遺伝だけでは説明できないという点。きょうだい犬たちは、以下のような**“共通の初期体験”**を持っているため、似たような行動特性が育ちやすいのです。

主な要因

  • 胎内環境(ホルモン・栄養など)
  • 母犬の育児スタイル(世話の頻度や質)
  • 授乳の順序・競争
  • 同腹きょうだいとの遊びや模倣行動
  • 同じ飼育者・同じ環境で育った経験

これらが重なることで、性格形成に独自の“きょうだいパターン”が生まれるのです。

科学的に見る「リッター効果」の証拠

リッター効果は動物行動学や遺伝学の分野でも研究されています。以下に代表的な研究をご紹介します。

Strandbergら(2005年)スウェーデン

ジャーマン・シェパードの繁殖プログラムにおいて、リッター間の性格差が母犬個体の違いよりも大きいことが判明。
つまり、「どの母犬から生まれたか」よりも「どのきょうだいと一緒に育ったか」の方が、性格傾向に強く関与していたのです。

Foyerら(2016年)軍用犬研究

母犬の育児スタイル(舐める、温めるなどの行動)が、子犬の社交性や不安傾向に明確な影響を与えることを発見。
世話が丁寧な母犬の子は落ち着いた性格に、世話が少ない母犬の子は攻撃的・臆病な傾向が出やすかったと報告されています。

これらの研究は、きょうだい間の環境が“性格の共通点”を生み出す科学的な根拠として注目されています。

どんな行動に現れる?──リッター効果の具体例

では、実際にリッター効果はどのような形で現れるのでしょうか?

よくある例

  • きょうだい全員が吠えっぽい(→環境刺激や警戒心の学習が共通)
  • 全員が怖がりで人見知り(→社会化不足)
  • 1頭が怖がると他の子も連鎖反応で吠える(→模倣学習)
  • お互いをリーダー視して依存傾向が強まる(→分離不安の形成)

犬同士が一緒に育つことで社会的模倣をし合うのも、リッター効果の一部です。これは、きょうだい全体に似たような傾向が強化される理由でもあります。

あるミニチュアダックスのブリーダー宅に訪問したときのこと。数十頭が出迎えてくれたのですが、どの子もほとんど吠えませんでした。一般的には吠えやすい犬種とされており、実際大合唱で迎えられることが多いだけに驚いた記憶があります。無駄吠えをしない環境づくりを行い、何世代にも渡って受け継がれてきたことが伺えます。

あなたの犬にも当てはまる?リッター効果セルフチェック ✅

次の項目に当てはまるものにチェックを入れてみましょう。3つ以上あれば、リッター効果が性格に影響している可能性があります。

チェック項目
きょうだい犬と性格がよく似ている(吠えるタイミングや怖がり方など)
きょうだい全体が社交的、または内向的であると感じる
子犬の頃、同腹のきょうだいと長く過ごしていた(8週齢以上)
きょうだいが怖がると、自分の犬もつられて反応していた
ブリーダーが同じリッターの子犬たちの性格を「似ている」と言っていた
お迎え当初から、特定の行動パターンが固定化されていた(例:音に敏感)
他の犬と比較して、性格に「群れっぽさ」を感じる場面がある

📝 結果の見方:

  • 0~2個:リッター効果の影響は少なめ。環境要因の方が大きいかも。
  • 3~5個:リッター効果が影響している可能性あり。
  • 6個以上:かなり強くリッター効果が反映されている可能性大!

いかがでしたか?あくまで参考程度に捉えてくださいね。

ブリーダー・飼い主が気をつけるべきこと

リッター効果を理解することは、より健やかな性格形成のための鍵になります。以下のポイントを意識しておくと良いでしょう。

ブリーダー側の工夫

  • 社会化期(生後3〜14週)に多様な人・環境と接する機会を与える
  • 母犬の育児能力(世話・気質)を繁殖評価に含める
  • リッターごとに記録をとり、性格傾向を追跡
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飼い主としての配慮

  • きょうだい犬の性格が似ていても「遺伝だから仕方ない」と決めつけない
  • 個体ごとの社会化・しつけを丁寧に行う
  • 分離譲渡(子犬の引き渡し)時に急な環境変化に配慮する
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まとめ:性格は「親だけ」で決まらない

リッター効果は、「犬の性格は遺伝だけで決まるわけではない」という事実を改めて浮き彫りにしてくれます。

  • 両親から受け継ぐ遺伝的素因
  • 母犬との関係や、きょうだいとの初期環境
  • そしてその後の社会化やしつけ

こうした複合的な要素が積み重なって、1頭1頭の個性が生まれます。

きょうだい全体が似た性格に見えるとき、それはリッター効果が強く現れている可能性があります。しかし、飼い主の関わり方や育て方次第で、そこから個性が花開くチャンスも十分にあるのです。

逆に言えば、後天的要因だけで決まるものでもないとも言えますので、子犬を迎える際にはしっかりと環境(ブリーダーやペットショップなど)を確認することが重要です。

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