花火が怖いのは子犬のうちに決まる?──犬の音恐怖症と音への耐性、年齢・犬種・飼育環境の関係

毎年夏の風物詩として親しまれる花火大会。しかし、多くの犬にとってそれは強い恐怖体験でもあります。近年の大規模調査により、花火に対する恐怖症(音恐怖症)は犬の半数前後に見られ、しかもその多くが子犬期に発症していることが分かってきました。本記事では、スイスや英国、アメリカの研究成果をもとに、犬の音恐怖症と年齢・犬種・飼育環境との関係について深掘りしていきます。

目次

花火に対する恐怖反応──犬の約半数が経験

2019年にスイスのリエマー博士らが行ったオンライン調査(n=1225)によると、回答犬の52%が花火に対して何らかの恐怖反応を示すと報告されました(出典:PLOS ONE)。

以下は、各国で報告された「花火に対する犬の恐怖反応」の割合をまとめた表です:

国・地域恐怖を示す犬の割合出典
スイス(リエマー博士, 2019)52%PLOS ONE
アメリカ(Bil-Jac調査)83%Bil-Jac.com
イギリス(RSPCA推計)約50%RSPCA.org.uk
ハワイ(現地獣医ブログ)多くの犬がパニックにLighthouse Hawaii

このように、国や調査機関によって数値には差があるものの、およそ半数以上の犬が花火に強い不安・恐怖を感じているという傾向は共通しています。

子犬期に発症するケースが多い

この調査の注目すべき点は、その過半数が生後1年以内に恐怖症を発症していたという事実です。つまり、花火や雷といった大きな音に対する不安・恐怖は、成犬になってから突然始まるものではなく、幼い時期に形成される傾向が強いということが分かります。

年齢とともに恐怖が強まる?

一方で、7歳以降になってから新たに花火を怖がるようになるケースは少ないとされています。ただし、高齢になると恐怖症状が悪化する傾向も指摘されています。これは加齢に伴う聴覚の低下により、音源の方向が分からなくなって不安が増すこと、また慢性的な痛みなどの体調要因が関係していると考えられています(出典:smithsonianmag.com)。

犬種による傾向の違い

英国ブリストル大学の調査(Blackwell et al.)では、音恐怖症の発症リスクには犬種による差異があることも報告されています。

雑種犬はリスクが高い傾向

  • 混血の犬(ミックス犬)は、純血種よりも花火や雷に対する恐怖を示す割合が高いとされています(出典:PLOS ONE)。

花火に対する耐性が高い12犬種(例)

一方で、以下の犬種では、雑種犬よりも音に対する恐怖反応が少ない傾向が確認されています:

  • ラブラドール・レトリーバー
  • コッカー・スパニエル
  • スプリンガー・スパニエル
  • ジャーマン・シェパード
  • ベルジアン・シェパード
  • バセット・ハウンド
  • ダルメシアン
  • ブルドッグ
  • プードル
  • 北方犬種(例:ハスキー、マラミュート、サモエドなど)

これらは主に「ガンドッグ(猟犬)」系統で、狩猟や作業犬として人と共に大きな音の環境に置かれることが多く、遺伝的に音刺激への耐性が強いと考えられています(出典:Bristol大学、PsychologyToday.com)。

恐怖症のリスクは育ち方でも変わる?

興味深いのは、犬の育った環境によって恐怖症の発症リスクが異なるという報告です。

  • ブリーダーから直接迎えられた犬は恐怖症リスクが比較的低い
  • 社会化不足の犬ではリスクが高まる傾向

これは、幼い時期に安心できる環境で適切に社会化された犬の方が、外部刺激に対して適応しやすいためと考えられます。

おわりに──恐怖の予防は「子犬期の経験」が鍵

今回紹介した研究から分かるのは、花火や大きな音への恐怖反応は、犬の成長過程と深く関係しているという点です。発症年齢、犬種、育った環境——これらの要因が複雑に絡み合い、個々の犬の行動に現れます。

私たち飼い主ができることは、子犬期からさまざまな音や環境に慣らしていく社会化トレーニングを意識すること、そして既に恐怖症を持っている犬に対しては環境調整や専門家の支援を活用することです。

愛犬の恐怖を「気のせい」で済ませず、科学的な知見をもとにした配慮が、真の信頼関係につながります。

社会化トレーニングは子犬を迎える上で必須です。我が家に来てからはもちろんですが、来る前も行われるような環境で育っているかが重要です。

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