2025年、アニコム損保の「人気犬種ランキング」で、MIX犬(10kg未満の混血小型犬)が史上初の第1位に輝きました。
実際、科学的に見てMIX犬と純血種では、どちらが健康で、どんな違いがあるのでしょうか?
本記事では、遺伝的リスク・健康・性格の傾向・繁殖における倫理・迎え入れ時の注意点を、欧米の獣医学・行動学の研究を元に詳しく比較解説します。
2. 遺伝子の多様性と病気のなりやすさ

- 純血種:近親交配の歴史により、劣性遺伝病が出やすい。遺伝的多様性が低い。
私がこの業界に関わった25年以上前は、近親交配を当たり前のように行なっている繁殖業者もいました。一方、真面目に取り組んでいるブリーダーは、遺伝学を学び、国内だけに留まらず、国外のブリーダーとも連携をとり、血が濃くならないよう計画交配を行なっています。
- MIX犬:異なる血統が混ざることで、劣性遺伝病が出にくくなる(雑種強勢)。
雑種強勢(ざっしゅきょうせい)とは、異なる血統や系統をもつ動物同士を交配したときに、その子どもが親よりも健康・体力・繁殖力などが優れる現象のことです。
- 例:拡張型心筋症、甲状腺機能低下症などは純血種で多く確認。
- ただしMIX犬でも、遺伝病の保因者は多く存在する。
3. 寿命と健康の傾向

- 雑種は平均寿命が1〜1.5年長いという研究結果あり。
- 純血種は極端な体型や犬種特異的な病気(例:短頭種の呼吸器トラブル)に注意。
- 繁殖管理が適切であれば、純血種でも健康に長生きできる個体は多い。
- 雑種=無敵ではなく、個体差・飼育環境が健康に大きく影響する。
個体差(交配管理)、飼育環境は、純血種、ミックス犬(雑種)の枠を超えて大きく影響を受ける要素だと実感しています。それだけ、ブリーダーの知識、モラル、環境が問われています。

4. 性格やしつけのしやすさは?

- 純血種:用途別に繁殖されてきたため、性格や行動の予測がしやすい。
- MIX犬:性格は親の影響を受けやすく、行動傾向にばらつきあり。
- 一部調査では、MIX犬は「落ち着きにくい」「他犬に攻撃的」傾向という報告も。
- ただし、幼少期の社会化・育て方が大きく影響する。
ブリーダーやペットショップで、どれだけ社会化トレーニングを行なってくれているかも重要です。



5. ブリーダーのモラルと繁殖の責任

- 遺伝病を持つ親犬を交配させることのリスクは、雑種・純血種に共通。
- 雑種犬にも保因者は多く、無計画な繁殖は病気の子犬を生む可能性あり。
- 繁殖には、親犬の健康チェック・遺伝子検査・倫理的判断が不可欠。
- 「自然にできたから健康」ではなく、人が命に責任を持つことが求められる。
雑種、純血種に関わらず、ブリーダー、ペットショップ選びが重要です。
6. MIX犬を迎える前に気をつけたいこと

MIX犬を飼うときほど、「どこから来たか」が大事です。
チェックポイント:
- 母犬の情報があるか(父犬も可能なら)
父犬は、別の犬舎から交配時のみ連れてくることが多いです。
- 実際に親犬に会えるか(もしくは写真などで確認できるか)
MIX犬の場合は、どれぐらいの大きさになるのか予測を立てる上でも親犬の情報を得ることは重要です。
- 遺伝病に関する説明があるか
- 信頼できるブリーダーやショップから迎えられるか
ペットショップで子犬を探す場合、繁殖、飼育環境、母犬などブリーダーや犬舎の情報、その子の現状の性格や、リスクなどできる限り詳しく説明できるお店で飼うようにしましょう。
可愛いだけで選ばず、「どんな背景で生まれた子なのか」まで知ることが、犬も飼い主も幸せになる第一歩です。
犬の販売価格は、環境や健康面ではなく、見た目の珍しさ(レアカラー・MIX犬の場合は組み合わせの珍しさ)などで決めているブリーダーやショップもあります。真摯な販売者は健康上リスクのある子犬を販売する場合、それらを包み隠さず説明のうえ、比較的安価で譲られる方が多いです。
なお、保護犬を迎えるのもおすすめです。ボランティアの皆様はその子の背景、性格を熟知しているケースが多いので、それらを踏まえて自分たちにあっているか否かを慎重に判断することができます。
7. 結論──「MIXか純血種か」よりも大事なこと

- MIX犬は健康リスクが少ない傾向、純血種は気質や見た目の予測がしやすいという明確な違いがある。
- でも大切なのは、「どんな犬種か」より「どんな関係を築けるか」。
- 犬を迎える側も、親犬の背景やブリーダーの姿勢を見極める目を持ちたい。
「MIXは純血種より安く飼えるから」という安易な理由で選ばないようにしましょう!
📚 参考文献・出典
本記事の内容は、以下の研究論文・公的資料・専門機関の情報に基づいて構成されています。
🔬 学術論文・研究調査
- Bellumori, T. P., et al. (2013)
「Prevalence of inherited disorders among mixed-breed and purebred dogs」
Journal of the American Veterinary Medical Association, 242(11), 1549-1555
👉 雑種犬と純血種の遺伝病の発症率を比較した大規模調査。
(https://doi.org/10.2460/javma.242.11.1549) - Donner, J., et al. (2018)
「Frequency and distribution of 152 genetic disease variants in over 100,000 mixed breed and purebred dogs」
PLOS Genetics, 14(4): e1007361
👉 DNA検査に基づく雑種と純血種の遺伝病リスクの大規模分析。
(https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1007361) - Turcsán, B., et al. (2017)
「Owner perceived differences between mixed-breed and purebred dogs」
PLOS ONE, 12(2): e0172720
👉 飼い主の主観的評価に基づく性格比較。
(https://doi.org/10.1371/journal.pone.0172720) - Kraus, C., et al. (2023)
「How size and genetic diversity shape lifespan across breeds of purebred dogs」
GeroScience, 45, 1233–1247
👉 純血種の寿命と遺伝的多様性に関する研究。
(https://doi.org/10.1007/s11357-023-00755-0) - Forsyth, A., et al. (2023)
「Lifetime prevalence of medical conditions among purebred and mixed-breed dogs」
Dog Aging Project(プレプリント)
🧭 関連データ・統計
- アニコム損保「家庭どうぶつ白書2025」人気犬種ランキング
👉 MIX犬(10kg未満)が2025年の飼育頭数1位に。
(https://www.anicom-sompo.co.jp/) - Wisdom Panel DNAデータ(米Mars社)
👉 雑種犬の遺伝的傾向分析。
ブリーダー、ペットショップ選び、子犬の飼い方相談、社会化教育の方法なども承っています。
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