愛犬と泊まれる宿、ペットOKのカフェ、ドッグラン併設の道の駅──
ここ数年で、「ペットと一緒に旅を楽しむ」スタイルは確実に広がってきました。
しかしその一方で、ふと感じる違和感があります。
「本当に、犬にとっても楽しい旅になっているのだろうか?」
この記事では、そんな「ペットツーリズムのジレンマ」について、体験談や社会的背景も交えながら深掘りしていきます。
ペットツーリズムが広がる背景

- コロナ禍による「ペットブーム」で犬連れ旅行の需要が急増
- SNS映え・インスタ投稿の加速で「旅×ペット」スタイルが人気に
- ペット同伴OKの宿泊施設や観光地、キャンプ場も急増中
一見喜ばしい流れに見えますが、その陰でマナーの低下や飼い主の自己満足化も社会問題になりつつあります。
実際、かつて犬OKだった施設がNGに変更されるケースも増えており、その多くが「ルールを守らない飼い主の存在」が原因です。
犬にとっての“旅”は楽しいのか?

犬にとって「旅=楽しい」とは限りません。人間にとってのワクワクは、犬にとってはストレスにもなり得ます。
✔ 慣れない環境による不安
匂い、音、人混み、交通手段など普段と違う刺激が重なり、緊張状態に陥る犬もいます。
✔ 宿泊や移動時の“我慢”の連続
ペットOKの宿でも「ケージ内で過ごす時間が長い」「ベッド使用NG」「吠え禁止」など、犬にとっては制限の多い時間が続きます。
✔ 飼い主との感情ギャップ
「楽しいね!」と語りかける飼い主に対し、犬は「疲れた…帰りたい…」と感じているかもしれません。
✔ 人混みや大音量イベントのリスク
花火大会、夏祭り、人気の初詣スポットなどは、人間には楽しい場でも、犬にとっては音・振動・密集のトリプルストレス。
パニックになり逃走する危険性もあり、十分な配慮が必要です。
体験談──理想と現実のギャップ

📍 長距離ドライブ後に到着早々、犬が下痢&食欲不振に
📍 キャンプ場で他の犬と衝突し、それ以降ドッグランを拒否するように
📍 炎天下の観光中に足裏を火傷。旅行どころではなくなった
などの体験を伺ったことがあります。
いずれも「一緒に行けば楽しいはず」と思っていた旅。
でもその裏で、犬がどれだけ無理をしていたのかに気づいた瞬間でもあったはずです。
社会・観光地の“歓迎”と“対応の限界”

最近は「ペット歓迎」を掲げる宿泊施設や観光地も増えていますが、
すべての場所が犬に優しいわけではありません。
さらに、地域住民や他の旅行客とのトラブルも少なくありません。
その結果、以前はOKだった場所が“犬NG”になってしまうケースが全国で増加しています。

その大きな原因は、一部の飼い主によるマナー違反。
ルールを守らない、あるいは守れないことが積み重なり、
施設側も「やむを得ず禁止にする」という選択をせざるを得なくなるのです。
飼い主は、「犬が苦手な人もいる」ことを忘れず、公共の場での振る舞いを常に意識する必要があります。
解決のヒント──“同行しない”選択肢もやさしさ

🐾 「連れて行かない」という選択も愛情のかたち
「せっかくだから一緒に」ではなく、「この旅先はこの子にとって快適か?」という視点で判断することが大切です。
私自身、以前はどこに行くにも犬と一緒でした。
宿泊もすべてペット同伴OKの場所に限定していましたが、
今では旅先のペットホテルや一時預かり施設を利用することも増えました。
愛犬ととことん楽しめる場所と、ペット不可の場所の両方を訪れることで、
旅行にバランスが生まれ、私自身もより豊かに旅を楽しめるようになりました。
また、私は犬と出かけるのが大好きですが、
特に暑い夏場などは無理に連れて行かず、
クーラーの効いた自宅で快適に留守番させたり、
早めに慣らしておいたドッグホテルに預ける選択肢をとることもあります。
🐾 事前準備の大切さ
こうした柔軟な選択を可能にするためにも、クレートトレーニングや短時間の外泊への慣らしといった準備が必要です。

そして最後に、私たち飼い主が忘れてはいけないのは──
自分たちの首を自分たちで締めないこと。
犬との旅を続けたいなら、マナーはもちろん、正しい知識としつけも必須です。
それが、未来の「犬と行ける場所」を守ることにつながります。
おわりに──「一緒にいること」がゴールじゃない

犬との旅は本当に楽しいものです。
でも、「一緒にいること」自体をゴールにしてしまうと、犬の気持ちを見失ってしまうこともあります。
本当に大切なのは、その子にとっての幸せを考えること。
一緒に行くのも、預けるのも、「愛」からの選択であるべきです。
ペットツーリズムがもっと広がるために──
その第一歩は、飼い主一人ひとりの思いやりと判断力にかかっています。
カフェやペット宿などお出かけに役立つトレーニングをサポートできます。